熊本城 一口城主制度

1万円寄付すれば、あなたも熊本城主になれる!!?

注意

Kumamoto Castle sustained heavy damage during the 2016 earthquake. During the summer of 2021, the inner keep reopened after a 5-year reconstruction period. However, sitewide renovations are expected to continue until around 2038.

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日本には数多くの城があるが、私は熊本城が好きだ。なぜならこの城、他の城と比べるに、断然雄々しいからである。

この城が雄々しい理由が、実はある。徳川家は1603年、紆余曲折の末幕府を開いたが、その後徳川幕府は各大名の管轄する城の増強、改築を嫌い許可を渋った。なぜならこの徳川家、将軍家と言えば聞こえは良いが、単に数ある大名の中の最も強大な大名だったというだけで、譜代を含む各大名は元々の家臣ではない。いつ何時彼らが反乱を起こすか分からないのである。そのため彼らの軍備増強には細心の注意を払ったのだ。

しかし熊本城は別だった。幕府開闢(かいびゃく)当時、そして徳川時代265年間の長きを通じ、徳川が最も恐れたのが薩摩(現: 鹿児島)の島津氏だった。島津氏は鎌倉時代より九州地方の守護を命じられた名族で、古くからこの地を支配したため代々の忠臣を持ち、その兵の強さで知られていた。関ヶ原の戦いの後、表向き徳川家に臣従したものの、徳川家にとって、いつ何時牙をむくか知れたものではない強敵だったのだ。そのため徳川は、島津が反旗を翻した場合に備え、熊本の統治を任せた加藤清正に、島津の抑えとして熊本城築城を命じた。島津が反乱を起こした場合、第一通過点になるのが熊本で、そこで島津を抑え込んでしまえ、というわけだ。

こうして武勇名高き加藤清正が、徳川の強敵島津を抑え込むため知恵を尽くして建てたのが、この熊本城なのである。どおりで雄々しいわけで、幸い徳川幕府時代に戦闘機会はなかったものの、明治以降起こった西南戦争(1877)で、西郷隆盛率いる14,000の薩摩軍(旧島津家臣軍)が政府軍の守る熊本城を攻撃した際、4,000人の政府軍はこの頑強な城に籠城して応戦、14,000の薩摩軍を見事撃退したのである。1606年に対島津用に建てられたこの城が、271年後、期せずして島津兵と相まみえ、近代兵器の攻撃をかわし勝利したというのだから驚きだ。薩摩軍は城内に侵入することすら出来なかったそうだ。加藤清正、あっぱれである。

そして、その「かっこいい」熊本城の、なんと城主になれると言われれば、それはあなた、ならない手はないのである。少なくとも私はすぐに飛びついた。

熊本城は2009年から、「一口城主制度」なる制度を導入し、広く国内外から熊本城復元整備資金を募り始めた。国籍、個人、法人、団体を問わず、誰でも熊本城の復元工事に一役買うことができる。募金額は一口1万円からで上限はない。熊本城に1万円寄付すれば、「城主証」「城主手形」を受け取り、天守閣に自分の名前が書かれた木製の「芳名板」が掲示される。城主手形とは一種のフリーパスで、熊本市が管理する16の有料施設(熊本城含む)へ無料で入場できるというもの。無料期間は一口1万円で1年間、10口10万円で10年間だ。

しかし私が一口城主になったのは、何も無料パスが欲しかったからではない。城主手形を持っていても、熊本に住んでいない限り、大して役には立たないのである。私がこの寄付制度で何より心魅かれたのは、自分の名前が記された「永代帳」が、「永久に熊本城の天守閣で保存される」という言葉だった。「永久」という期間が、どの程度の「永久」なのか定かでないが、永代帳に記される限り、少なくとも私が死んだ後も自分の名前が愛する熊本城と共に生き続けるのだ。これはファンにとってはたまらない魅力だ。また熊本城では、天守閣地下及び1階に芳名板検索システムを設置しており、給付された城主番号や名前で、自分の名が記された「芳名板」が天守閣のどこに掲示されているかを検索することができる。自分の名札が掲示されているとなれば、嫌でも確かめに行きたくなるのが人情だ。このように寄付だけに留まらず、リピーター獲得にまで功を奏したこの制度、2009年から2013年の4年間で44,309件、累計約5億4,300万円の寄付を集めている。

そして熊本城の一口城主になった私は、ついでにアメリカ人の友人の代理で寄付をしてみた。外国人の名前がどのように書かれ掲示されるか興味があったのと、その友人が大の城郭ファンだったからである。熊本城天守閣で彼の名は縦書き英語で記され、出身国名も共に記されていた(写真参照)。城主証をアメリカの彼の自宅に送ると大そう喜び、「今度日本に行ったら絶対熊本城に行くぞ!」と上機嫌で語っていた。この「一口城主制度」により熊本城は、遠い海の向こうのアメリカにもファンを一人獲得したようだ。

というわけで、永久に!? 日本の重要文化財、雄々しき熊本城と共に生き続けられるこの「一口城主制度」、あなたも試してみては如何だろう?

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