ダルマの絵付け、群馬県

信仰と芸術の一体化

群馬県高崎市の東側に広がる山すその、そこかしこに見られる寺院や由緒ある名勝。その中でも少林山の達磨(ダルマ)寺は、信仰の対象でありながら、ダルマの絵付けの発祥地でもあります。ここには各地から人々が、祈りとともに芸術体験を求めて集まるのです。

ダルマは山縣朋五郎(やまがたともごろう)によって生み出されました。ダルマというのはもともと中国で禅宗を開いた僧の名前です。中国では彼が名高い少林寺の裏山の洞くつで9年間座禅をしたと伝えられており、彼の教えは後に日本へも伝わりました。当初のダルマの形は現在のものよりも細長く、カイコのまゆの形に似ていて、養蚕農家に幸運をもたらすとされていました。カイコが脱皮することは「起きる」と呼ばれていたのですが、古いダルマの形はその「起きる」姿に合わせてより縦長に作られたものでした。のちに、より丸みをおびて安定した形になりました。

現在、ダルマは地元の養蚕農家だけではなく、その独特な形とさまざまな顔の模様によって広く人々の心をひきつけています。縁起物としてダルマを買うこともできますが、願いがかなうように心を込めて自分で絵付けをすることもできます。サイズは2種類、色は赤が人気のある伝統色ですが、白・青・紫・緑・ピンクからも選べます。鼻と口と白目はあらかじめ描いてあり、あとは眉毛と口ひげを黒色で描き入れれば完成です。眉と髭の形はそれぞれ鶴と亀を模していますが、この二つの動物は仏教では長寿の象徴としてとても縁起がいいのです。願い事は顔の下側と両脇に金色で書き入れます。

目はまだ描かないでくださいね、お寺で描いてしまってはいけませんよ!ダルマを家に持ち帰って、願い事をした後、まず左目を描き入れます。ダルマに向かって右側の目です。後に願い事が実現したら、もう一方の目も入れます。望みがかなった後のダルマはお寺に納め、法要の日にまとめてお焚き上げして供養されます。この仏事の背景には、大地から頂いたものに執着してはいけないという仏教の教えがあります。ものを手放すことが幸福への真の道であり、仏教の真理に近づくことができるというのです。

もちろん、それほど信仰熱心でもなく、物質主義も悪くないと考えているなら、ダルマを家に飾っておいてもいいでしょう。実際多くの人がそうしています、だってとても愛らしいし自分で仕上げたのですから。持つべきか持たざるべきか、それは心の中で深く自問しなければならない、また別の問題なのです。

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