太閤秀吉肉付像が現存する寺、理知院

四季折々の花が咲く、優しいお寺

大阪府の南部、和歌山県との県境に近い泉南郡岬町に所在する理知院。こちらは檀家寺で一般公開されていない為、普段は静寂に包まれた佇まいで、四季折々の花々が咲くとても落ち着いた雰囲気の寺院である。

その由緒が面白い。弘法大師が唐より帰国の途上、暴風雨に見舞われた際、自ら刻んで鎮静祈願を行った追風不動明王(おいてかぜふどうみょうおう)を本尊に迎えている。また太閤秀吉が朝鮮出兵に際して大阪堺から前線基地九州名護屋へ海路出陣した折、途中嵐に遭って谷川港に避難。しかし当時の理知院住職だった桂忍上人が祈祷して風雨が鎮静化した。これを喜んだ秀吉が感謝の意を込め木像に自身のひげを移植して奉納したそうだ。他にも秀吉の家臣・僧侶利新左衛門作「狛犬」や、秀吉の嗣子秀頼公が八歳の時に記した一幅の書などの宝物が現存する。何より驚いたのは、私共夫婦が理知院の奥様より接待を受けた応接間の隣の部屋、ここにあの日本が生んだ博物学の奇才、日本のダ・ビィンチとも云われた南方熊楠が欧州から帰国後、暫く滞在していたというのだ。日本民俗学の創始者、柳田國男をして「日本人の可能性の極限」と言わしめた南方熊楠。留学中に心無い英国人の日本人に対する侮蔑的発言に怒り、大英博物館で暴力沙汰を起こし、博物館への出入り禁止処分。打ちひしがれての帰国だったのだろう。おそらく、この書斎での熊楠は無気力状態であったのかもしれない。今回、理知院と縁者である知人の誘いで大変有意義な参拝をさせて頂いた。寺社の方々にはとても気さくな対応でご説明頂き、初めての参拝者には時間が過ぎるのを忘れるくらい居心地の良いひと時だった。

年間を通して、色々な行事が催されている。事前予約は必要だが、宗旨宗派にかかわらず参加出来る。観光目的の著名な寺院も良いが、たまにはこう云った静かな檀家寺で過ごすのも気持ちがやすらぐ。

※檀家の方のお詣りも多い為、一般参拝者も相互が気持ち良い時間を共有出来るよう最低限のマナーと気遣いを求めたい。

参拝時間:堂内拝観要予約 9:00~16:00

行き方

理知院へのアクセス:交通:南海・みさき公園駅、または南海・多奈川駅下車 小島住吉行きコミュニティバス極楽橋下車、徒歩5分

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