越前加賀海岸国定公園内にある「越前松島水族館」は開館55年(2014)の古い水族館だ。
地元福井の人たちは幼い頃一度は必ず遠足でここを訪れたはずである。
東尋坊から北に延びる柱状節理の美しい岩はこの水族館辺りで特にその景勝の見事さを増す。
その岩に自然にできた竪穴ははるか縄文時代に竪穴住居に使われていた。
水族館下の海岸を散策した後、小さな子供の手を引いて水族館に入ると、たちまち子供が歓声をあげる。
フンボルトペンギンが園内を散歩するその行列に出くわしたのだ。
小さなフンボルトペンギンが8羽ほどよちよちと歩く。
低い柵の中に入ると、その周りに観客は近寄ることができる。
直接触れたり餌を与えたりすることはできないがそばに寄ってで見られることに子どもたちは大喜びだ。
園ではほかにキングペンギンも園内散歩を見せているという。
次はイルカショーの時間だ。
午前と午後に一度ずつ、それぞれ20分ほどの長さで開かれるイルカショーもよく調教されたイルカのつややかな胴体を間近で見て楽しめる。
東京の品川水族館のイルカショーは水槽も大きいことから迫力があるがここのショーもそれに引けは取らない。
調教の人がヘッドセットで観客に語りかけながらイルカに指示する様が見ていて飽きない。
隣の席に県内の高校からの遠足の団体が座っていたが、高校生でもこういうところへ引率して来るのだと、そういう企画を立てた先生たちに感心した。
なるほどと頷いたのは、そのイルカショーの後、彼らは手際よくバーベキューの準備を始めたことである。
園内にはバーベキューを楽しむスペースがあって、予約すればそれが可能だという。
個人客である私はさらに水槽を見る建物に入った。
大きな水槽の側面がアクリル壁になっており、照明を落とした部屋から見るとまるで海の底を見ているようだ。
子どもたちは泳ぎすぎてゆく魚を指さし目を大きく見開いている。
この越前松島水族館のキーワードは「見て、触れて、楽しく学べる水族館」であるという。
タコや魚に触れること、ウミガメに餌やりができることもそれに沿った仕掛けであろう。
もちろん、全国のもっと豪華に仕掛けられた水族館を知る大人であればここは食い足りない部分がいろいろあるだろう。
しかし小さな子どもを持つ家族客は十分楽しむことができると思う。
要はそんな小さな子どもと一緒になって大人もどれだけ感動できるかだと思う。
親が「おお~!」と子供の前でちょっと大げさに驚いてみせると子供はそんな親と共に見る楽しさをより深めるだろう。
逆に親が内心でも白けてさめているとそれは子供にも伝わる。
だから小さな子連れのご両親は、子供の前での見方があるのだということを心に留めておいていただけたら幸いだ。
これからのさらなる発展や見せ方の工夫は水族館側に期待したい。