日本に来てただ一つだけ寺を訪れるなら川崎大師に行くのが最上の選択だ。理想的立地でアクセスが簡単な上、日本の伝統を思う存分堪能できる見事な寺院だからだ。それだけ広壮で美しく、威風堂々とした立派な寺なのである。
寺に着くと、地元の人々や特別な訪問者、そして観光客と、多様な参詣者が集っているのに気付くだろう。最後に私が行ったのは10月だったが、その際は修学旅行で訪れた大勢の小学生でにぎわっていた。七五三のお祝いに来た着物姿の可愛らしい少女達を含む家族連れや、単にお祈りするために参拝に訪れた人々、鬼ごっこをして遊ぶ近所の子供達に交じって、僧侶たちが意味深長にゆったりと歩く姿が印象的だった。
川崎大師といえば初詣の参拝客で有名だ。毎年大晦日になると、寒さにも関わらず300万人近くもの人々が参詣し、過ぎ去りし年への感謝と来るべき年への希望を胸に祈りを捧げる。この寺は新年の初詣以外に毎月20日、21日に行われる市や5月に行われる能舞台、7月開催の風鈴市等で広く知られている。
歴史
この寺で最も尊崇の念を集め、崇拝の対象となっているのが弘法大師(紀元774~835年)である。日本で仏教の教えを広めたことで有名だ。平安時代、中国(当時の唐)で学んだ後に日本に真言宗をもたらした。
1128年、尊賢(そんけん)と兼乗(かねのり)という二人の僧が平間寺(へいけんじ)の建立に着手した。これが現在の大本山川崎大師平間寺の始まりである。この寺は後に弘法大師崇拝の中心的存在となり、彼の教えを広める拠点となった。
行事
タイミングさえ合えば、あなたも川崎大師の年中行事に遭遇できるかもしれない。
・4月 ご供茶式(ごくちゃしき)
日本の伝統文化に興味のある人が絶対行くべきなのがこの茶会だ。主要茶会は裏千家家元の千宗室により、貫主と弘法大師御本尊の前で執り行われる。毎年4月の第2日曜に開催される。この主要茶会以外にも山内各所で大小の茶会が行われ、日本全国津々浦々から茶会ファンが参加、もしくは鑑賞するため馳せ参じ、一日中茶に打ち興じる。
・5月下旬 観世流 薪能(たきぎのう)
松明の灯りの元、夜間行われる。魅惑的な能狂言が山内に神秘的な世界を現出する。
・7月 風鈴市
この風鈴市祭りは4日間連続で行われる。7月の蒸し暑さを払うように、日本全国から取り寄せられた数々の風鈴の涼しげな音色が山内に鳴り響いて心地よい。お土産にも最適だ。7月20日には盆踊りも楽しめる。
殆どの日本国内の寺同様、川崎大師にも墓地がある。山内を歩くと墓地だけでなく(それだけでも魅力的なのだが)、他の仏像や彫刻、儀式などが見られる。寺に至る参道も楽しく、カラフルで多種多様な土産物を買うことが出来る。
このように盛大な寺は、言うまでもなく日本全国から、そして世界中からたくさんの訪問者を惹きつけてやまない。とはいえ地元民にもこよなく愛される、くつろげる空間でもあるのだ。一度でも訪ねてもらえれば、その意味を理解して頂けるだろう。