柿右衛門窯 展示場

16世紀から続く、有田の窯元

朝10時に、私たちはヒデさんと会うことになっていた。英語が話せる個人ガイドの人だ。彼は有田観光協会と提携していて、当協会は観光ガイドの提供も行っている。ヒデさんの英語は初めはわかりづらかったが、彼はとても親切で私たちのために大変よくしてくれた。その日の朝は私たち専用のタクシーがあって、それはもう、とても贅沢な気分だった!

その朝、ヒデさんはまず初めに柿右衛門窯に連れて行ってくれた。ここは、代々続く陶工一家の窯で、酒井田柿右衛門(1596~1666年)に始まり、現在この窯元は14番目の後継者、つまり14代酒井田柿右衛門によって営まれている(※)。彼は2001年に人間国宝に指定された。2011年には、オランダのレーワルデンにあるプリンセスホフ陶器博物館で彼の展覧会が開かれ、私はそこでボランティアガイドとして仕事をしたのだが、それ以来、個人的に柿右衛門に興味を持つようになったのだ。

驚いたことに、私たちは窯と工房への訪問までさせてもらったのだが、ここは通常は一般公開されていない場所だ。支配人が施設全体を案内してくれ、窯元について教えてくれた。もととなる原料lは高品質のカオリナイト(中国の高陵から由来する陶土として知られている)で、柿右衛門はこのカオリナイトの使用を許可された数少ないうちの一人だ。この陶土から作られる磁器は、乳白色で非常に繊細な構造をしている。窯のとなりには、大量に山積みされたアカマツの木材が目に入るだろうが、これは窯を熱するのに使われる。この種類の木材はかつては泉山で豊富に入手できたが、現在ではその数が不足し、日本中から運ばれてきている。

磁器は、900℃、1000℃、1300℃の三段階の温度で焼かれる。この温度は急速に上げられる。私たちは、何百年も前に作られた窯を見られることになり、その後、最も神聖な場所を見て回らせてもらった。窯元の工房である。ここは、作品をろくろの上で練ったり形作ったりする場所で、まるで何世紀も前に作られたようだ。またここでは、繊細な線で絵付けが施される。およそ10人ほどの人たちがろくろを操作していた。あらゆる花瓶、皿、お椀が、細心の注意を払われながら完璧な形に作り上げられる。絵付け部門では、20人ほどの人たちが極限の集中力を持って、磁器に絵付けを施していた。

私たちの有田ツアーの次なるスポットは、泉山だった。ここは、それ自体が国の史跡にもなった採石場だ。ガイドのヒデさんは、懐かしそうに思い出にふけりながら、自分が子どもだった頃、ここの洞窟でどういう風にしてよく遊んでいたのか教えてくれた。もう今では、この場所は落盤の危険があるため、入ることはできなくなっている。

それから私たちは、地域の美術館をいくつか訪ねた。有田には、多くの窯元に加えて、かなりの数の美術館がある。私たちはまず、有田陶磁美術館に行くことにした。ここでは、粘土から花瓶を作る工程について知ることができる。それから訪ねたのは九州陶磁文化館で、ここは90年代に開館した、きれいで現代的な建物だった。美しい展示品が数多くあり、私は何時間でもそこにいることができた。

もし窯元や陶磁器に強い興味があって、九州への旅行を計画しているなら、有田は必ず旅程に入れたほうがいい場所だ。これは、有田観光協会提供の英語版パンフレットだ。柿右衛門も必ずチェック!窯元自体と窯場は一般には公開されていないが、もし特別に関心があるなら、柿右衛門窯に直接確認をしてみるといいだろう。また、この地域を訪ねることがあれば、旅館 青望庵をオススメする。すばらしい人たちとすてきな部屋、おいしい食事に出会える宿だ。

(※2014年2月からは、15代酒井田柿右衛門が当代を引き継ぎ、運営している。)

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