今年で20回目になる『鴻巣びっくりひな祭り』。鴻巣は江戸時代から節句人形の産地であり、日本一高いピラミッド型ひな壇でも有名です。このイベントは、人形の産地として販売するだけでなく、役目を終えた雛人形を多くの人に愛でてもらい、最期は人形供養で感謝しつつ見送ることも大切にしています。祈りと感謝は雛人形だけでなく、サテライト会場に華を添えるつるし飾りにも表れています。
ひな祭りでは、祈りを形にする伝統的な技術や工夫に出会えます。多様な職人技の集結である雛人形にはもちろんですが、雛人形が高価で庶民が購入できなかった時代は、家族の着物の端切れを活用した手作りの縁起物『つるし飾り』で節句を祝いました。
そんな由来のつるし飾りは近年は人気の手芸でもあり、鴻巣では多くの手芸グループが存在し教室も開催されています。端切れで作る小物や人形などの「ちりめん細工」を纏めたのがつるし飾りですが、ちりめん細工自体もまた楽しまれています。
『鴻巣びっくりひな祭り』の期間中、そうした手芸作品を満喫できるのが【鴻巣市産業観光館 ひなの里】そして【花と音楽の館 かわさと花久(かきゅう)の里】です。
「ひなの里」は鴻巣市観光協会の施設であり、敷地内に江戸時代創業の人形店の蔵が三棟あります。その1つの蔵では、協会主催のつるし飾り教室の先生方が一年かけて制作した吹き抜けを彩る大作や脇飾り、さらにちりめん細工やつまみ細工教室の作品も展示されます。根気強く時間をかけた細やかな手芸品は、江戸時代の雅な享保雛・古今雛、愛らしい木目込人形や立雛(たちびな)に華を添えるだけでなく、今も昔も変わらぬ温かい祈りの心を感じさせます。
「花久の里」では、ホールでのピラミッド型ひな壇だけでなく、趣向を凝らした人形展示や離れの茶室でのつるし飾りなどが、代議士の私邸であった重厚な木造建築を晴れやかな空間にします。さらに施設内では『刺繍手まり』教室の作品展示、食事処や花苗・農産物・特産品の販売所もあります。広い庭の花も早春のひと時を和ませてくれるでしょう。