横浜中華街は、2500㎡に600店以上の店がひしめく食彩の街です。10カ所ある門のどこから入っても、そこは熱気に満ちたシノワズリーな世界。居並ぶレストランやテイクアウトの店々から飛び交う客寄せの声。カラフルでかわいい雑貨の店、テーブルを広げる占い師など、雑多な音が混じり合う華やかな喧噪。派手な看板と装飾過剰な建物の群れが、次々に目に飛び込んできます。横浜中華街は、街の中にある異次元の世界です。
世界の中華街の中でも、横浜中華街は最高の食を提供する街であると言われています。広大な土地をもつ中国。東西南北に広がる領土が生み出す地方色豊かな食材と、独特の調理法や味付けは、中華料理と一言で片付けることができないほど奥深いものです。中国旅行をしながら、国中に散らばった様々な食を楽しむということもできますが、すべてを味わうには相当の時間と経済力が必要です。でも、横浜中華街に来れば、その両方が大いに節約できます。ここにはあらゆる中華料理の店が、わずか数ブロックに凝縮されているのです。大きな胃袋と別腹が数個あれば、たった1日で、すべての味を楽しんで帰ることもできるのです。
ではどんな料理があるのか、概略をご紹介しましょう。
北京料理
中国各地から集めた食材を、宮廷料理人が様々にアレンジした「中国宮廷料理」がベースになっています。手の込んだ調理法、目にも豪華な飾り付け、洗練された美しい皿が特徴ですが、広義には家庭料理も含まれます。全般的に、小麦粉や獣肉を用いた料理が多いようです。代表的な料理は、北京ダック。アヒルを丸ごとオーブンでこんがりと焼き、その皮だけを削ぎ切りにして、千切りのネギ、キュウリとともに薄皮で包んで、甜麺醤(てんめじゃん)をつけて食べます。肉や内臓、骨は、前菜、スープ、揚げ物として調理していただきます。市民の家庭料理としては、饅頭(まんとう)や餃子(ちゃおず)などが代表例です。中華街では食べ歩き用の大きな肉まんが、街頭のあちらこちらで湯気を上げています。
[華正樓本店]かせいろう
外観はやや地味ですが、中に入ると豪華な装飾に目もくらむほど高級感があります。一品料理とコース料理(5400円から21600円くらい+サービス料)がありますが、一番下のコースでもかなりのボリュームがあり、満足度は高いと思います。
上海料理
長江の河口域で、かつ海の恵みを受けた上海地方では、海鮮料理が主体です。酒、酒粕、醤油、黒酢、砂糖などを多用するため、味は濃厚で、やや甘みが強いのが特徴です。上海蟹(シーズンは10月−11月)、小籠包、上海炒麺(上海焼きそば)などが有名です。なお、あつあつの小籠包を火傷せずに食べるには、レンゲをお願いするといいでしょう。
[四五六菜館]しごろくさいかん
明るく現代的な内装の、気軽なお店です。アワビ入りフカヒレスープ、車エビのチリソース、手鞠餃子がおいしいです。
広東料理
「食は広州にあり」と言われるほどに、広東料理の素材は多様です。ヨーロッパやインド、マレー半島など、海外からの調理法を取り込んだ料理には、チーズやカレー粉、サテソース、ケチャップなどが使われています。味付けはあっさりとしていて、素材のうまみを生かした料理が多いようです。酢豚やフカヒレスープ、海鮮チャーハン、飲茶などが代表例です。
[萬珍樓]まんちんろう
聘珍楼(へいちんろう)と並び称される高級料理店です。味、サービス、価格ともに最高級で、ランチコースは2名から予約可能。昼は2800円から5500円位まで、夜は6000円から21000円位です。お得な麺・飯ランチは1200円からありますが、週末はデザートとコーヒーが付かないので、平日に利用されるのがよいでしょう。いずれも10%のサービス料は別になります。
四川料理
四川地方は高い山々に囲まれた盆地で、夏は高温多湿、冬は厳しい寒さが訪れる土地柄です。夏は発汗を促し、冬は体を暖めるために、唐辛子や花椒などの香辛料を多用した麻辣(まーらー)という、痺れるような辛さが特徴です。ご存知、麻婆豆腐、回鍋肉、乾焼蝦仁(エビのチリソース)、担々麺などが代表的料理です。
[景徳鎮]けいとくちん
本場の辛さが味わえる気楽なレストランです。激辛は、臓器に響くほどの刺激があるので、体調を整えてからどうぞ。私は辛党ではないので、青椒肉絲(牛肉とピーマンの細切り炒め)や乾焼蝦仁を注文しますが、唐辛子、生姜、胡椒、ネギの風味がほのかに広がる絶品です。
台湾料理
四方を海で囲まれ、中央部には3000m級の嶺が貫く台湾は、山海の味覚が豊富な点で、日本料理と共通する点があります。また、医食同源の思想をもとに、体調を整えたり、病気を予防したり、さらには美容によい料理がたくさんあります。炒米粉(炒めビーフン)、八角の香りが漂う魯肉飯(台湾風豚の角煮飯)、空心菜の炒め物などが、人気メニューです。
[青葉本館]あおばほんかん
とても家庭的な店です。二日酔いには緑豆とクコの実入りお粥、しじみ炒めに仙草ゼリー、風邪のときは酸辣湯麺と、体調に合わせた料理をお勧めしてもらえます。