全国的にあまり知られていない事実だが、福井県の南越前には巨大なハス畑がある。日本国内で流通している商業用ハスの60%が、ここ南越前で栽培されているからだ。そのハス畑の面積は、なんと13万平米もあり、これは東京ドーム10個分の広さに相当する。この町が「花はすの里」と呼ばれる所以だ。しかし、私が今回訪れたのは商業用ハス畑ではない。南越前町が観光客、花愛好家、熱心な写真家たちに町の特産品「ハス」を楽しんでもらおうと、杣山 (そまやま) の麓に整備した「花はす公園」と呼ばれる公園/ハス畑だ。
花はす公園の中にはハス池がいくつかある。しかし観光客を驚かせるのはこの池ではない。公園前に狭い道を挟んで広がる広大なハス畑だ。この畑には、数えきれないほどの蓮が栽培されており、最盛期に畑一面に咲き乱れる蓮の花の光景は息を呑むほど美しい。
そして、ここからが重要なポイントだ。なぜこの場所が「写真天国」なのか? その理由をお伝えしよう。ここにあるのはハス「池」ではない、ハス「畑」だ。それゆえ畑には小道がところどころ走っている。ハスを近くで見るのにわざわざボートに乗る必要もなく、畑の中の小道を自由に歩き回り、間近に蓮の花を観察できるのだ。マクロショットを練習したい/撮りたい写真愛好家には絶好のフィールドなのである。次に重要なのが、このスポットが知る人ぞ知る秘境だということだ。毎年7月下旬から8月上旬に行われる「花はす祭り」開催中ですら、土日を除く平日の来場者は少ない。たとえ来場者の多い日に出くわしたとしても、この広さだ、全く混雑など感じないだろう。更に、周囲の自然がとにかく素晴らしい。山々に囲まれた花はす公園では、ハスの花からふと目を挙げると、一面に広がる緑の木々に囲まれていることに気付く。鳥はさえずり蛙が泣き、とんぼは空をすいすい飛んでいる・・・なんというのどかさだろう、自然好きには最高の場所だ! そして田舎の中のまた田舎にあるこの公園だが、野を越え山を越える必要はなく、電車のアクセスは良い。更に、なんと公園の真横には温泉ホテルまであるのだ。ハスの花は早朝が美しいのだが、早起きして出掛けるのは花好きといえどもなかなか難しい。しかしこのホテルに泊まれば、目覚まし通りに目を覚ますだけでよい。後はカメラを引っ掴み布団から飛び出すだけで、目の前にハス天国が広がっているのだ。至れり尽くせりとはこのことだ!
今回私はピークを過ぎた8月中旬に花はす公園を訪れたのだが、遅すぎることはなかった。これから咲き始める花もずいぶん沢山残っていた。畑の一部で花が枯れていたとしても、この広さだ、他の一角では必ず咲いている、もしくはこれから咲く花に出会えるはずだ! 台風一過の福井で可憐に咲いたハスの花は、雨に濡れ、息を吹き返したかのように新鮮に見えた。人は殆どおらず (多分10人以下だったろう)、あまりの行幸に狂喜乱舞し、我を忘れて3時間も写真を撮りまくってしまった。それでも広大な畑全部をカバーすることはできなかった。また再訪せねば!
ご覧のとおり、福井の南越前「花はす公園」は、写真天国、そして花や自然を愛する人達のパラダイスだ。是非一度夏に訪れてほしい。このハス畑を見るためだけでも福井に来る価値があるというものだ。最寄駅はJR南条駅 (JR福井駅から約30分)、そこからタクシーで約8~10分で到着する。
花はす公園についての他の情報や写真は、下記のジャパン・トラベル記事をご参照頂きたい。
南越前「花はす公園」の記事/写真
1. 蓮の花・極楽の情景 福井
2. 福井 花はす温泉そまやま
3. 写真天国: 福井「花はす公園」
4. 南越前「花はす」フォト・コレクション - 1
5. 南越前「花はす」フォト・コレクション - 2