箱根 ガラスの森美術館

きらめくヴェネチアン・グラスの世界

Tomoko Kamishima   2012/07/27によって

自然の中でアートを楽しむ。箱根はそんな過ごし方のできる場所である。近代日本画を集めた芦ノ湖東岸の成川美術館、縄文時代から江戸時代までの日本陶磁器を専門とした強羅の箱根美術館、ピカソやムーアのコレクションと7万坪の敷地に点在する120点もの野外美術で知られる彫刻の森美術館、印象派を中心とした西洋画のコレクションを誇るポーラ美術館、ヴェネチアン・グラスの粋を集めたガラスの森美術館、アール・ヌーヴォーのガラス作家ラリックの作品を展示するラリック美術館など、箱根には見応えのある美術館が多い。

箱根ガラスの森美術館は、箱根連山の北部、仙石原にある庭園美術館である。近くにはススキの草原や湿生園、仙石原温泉などがあり、ポーラ美術館やラリック美術館も近い。ヴェネチアン・グラスのコレクションは、レストランうかいグループの創業者鵜飼貞男の収集品であり、ヴェネチア風の室内装飾を施した展示室で、15-18世紀のガラス作品を楽しむことができる。また、野外にもアートガラスが点在し、晴れれば陽の光が反射してキラキラと輝き、雨が降ればガラスの表面についた雫が小さな光の粒をのせたようで美しい。庭園には季節の花が咲き、四季を通じて楽しめる。美術作品を鑑賞した後は、起伏のある庭園を散策したり、園内のカフェで寛いだり、ゆったりと過ごすのもいい。

ヴェネチアン・グラス

繊細な技巧と鮮やかな色が特徴のヴェネチアン・グラス。かつては門外不出の技術とされたレース文様のコンポート、色ガラスを組み合わせて作る花柄のようなミルフィオーリ・グラス、光を当てると色調の変化するマーブル・グラスなど、息をのむような美しい作品が並ぶ。500点以上のコレクションの中から、常時100点ほどが展示されている。

現代アートガラス

エントランスを入ると、クリスタルガラスのアーチを施した回廊が目を引く。ヴェネチア風の水路をイメージした池に、小さな木橋が架かっており、その橋をすっぽりと覆うように、高さ9メートルのガラスのカーテンがかかっているのだ。これはフラッシュツリーと呼ばれる技法で、小枝のようなワイヤーの先端に、なんと16万粒ものクリスタルガラスが取り付けてあり、風がそよぐと、わずかにそのガラスの粒が揺れて煌めく。

ディル・チフーリ

ガラス工芸は香水瓶やテーブルウェアから始まって、豪華な室内装飾へ、そしてさらに野外アートへとその世界を広げている。ガラスの持つ繊細な美しさを自由な発想で拡張し、大胆で力強い作品に仕上げたディル・チフーリは、世界的アートガラス作家の一人である。展示室には生命力みなぎる鮮やかな色彩が広がっている。彼のシリーズ作品であるマキアは『斑点のある』やわらかなフォルム、シーフォームは太古の貝や海洋生物をイメージした作品である。それらはまるで生きているかのように、部屋いっぱいにエネルギーを解き放っている。

ガラス体験工房

お気に入りのグラスやアクセサリーを作る体験工房は、毎日9時から受け付けている。型紙を貼って、ガラスの表面を削るサンドブラストは約30分、好きなモチーフを組み合わせて800-900度の熱で溶かし合わせるフュージョンは、約20分の作業で気軽に楽しめる。フュージョンは、熱が冷めてから金具などを取り付けるまで約1時間かかるので、その間カフェでドルチェやフルーツティーを楽しむのもいい。

カフェ・レストラン

毎日11時から一時間おきに6回、カンツォーネの生演奏が催される。曲の合間にはイタリア人歌手が、英語まじりのイタリア語で観客に話しかけてくることもある。『ボンジョルノ!』『トレビアン!』と笑顔で答えてみよう。食事と美しい景色、そして音楽とイタリア語。少しだけ非日常的な昼下がりになるだろう。

企画展・イベント

ガラスの森では、季節ごとに様々な企画やイベントを開催している。私たちが行った時には、ヴェネチアンカーニバルに合わせて、無料でマントやマスクの貸し出しを行っていた。マスクをつけた人々がガラス作品を鑑賞していたり、マントを翻しながら美術館の中を歩いて行くのを見かけたりすると、ふと中世のヴェネチアに来てしまったような錯覚を起こす。彼らの自然な動作は、その場所にすっかり溶け込んでいた。

箱根の美術館めぐりは、晴れていても、あいにくの雨でも十分に楽しめる。強羅から御殿場プレミアムアウトレットまでの一日フリーパス(観光施設めぐりバス)を使えば、成川美術館以外のほとんどの美術館に行くことができる。だが、非日常的な時間を楽しむなら、丸一日、一つの美術館をじっくりと味わうのがお勧めである。

Tomoko Kamishimaさんによって書かれました。
ジャパントラベルのメンバー

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