近年、日本は大人気の旅行先です。なぜかって? その答えは簡単です。東京や京都のように、既に知れ渡っている有名な観光地に加え、多彩な食文化や伝統を誇る日本は、アドベンチャーを求める人々にとってパーフェクトな旅行先なのです。でも残念なことに、多くの人は人気の有名スポットしか訪れず、その他の地域で味わえる素晴らしい体験を逃してしまうのです。今回私はその傾向を打破して日本最北端の県を旅行する機会に恵まれました。青森県と北海道です。この2つの美しい県では、日本の中でも一二を争う絶景が楽しめます。そして互いにユニークな歴史と文化を誇っているのです。青森県と北海道は、今までとは違う日本を体験できる最高の場所なのです。
1日目
旅の初日は青森市で始まりました。青森市は、青森県の中央部に位置する港町です。北日本の有名な縄文時代の史跡巡りをすることが旅の主要目的の一つだった私は、青森市からシャトルバス(ねぶたん号)に乗り込み、「三内丸山遺跡」へと出発しました。乗車時間はほんの20~30分で、特に冬場の寒い時期には、誰かに運転してもらうのが安心ですよね! 大量の雪で遺跡は部分的に閉鎖されているところもありましたが、それでも見るべきものはたくさんあり、この地の古代の歴史について多くを学ぶことができました。
三内丸山遺跡には、格別ユニークな建築物があります -- 巨大な複数階建てで六本柱の木造やぐらが、遺跡全体を見晴らすようにそびえ立っているのです。このレプリカは、数千年前の縄文人たちが、どれほど優れた建築設計能力を持っていたかを私たちに教えてくれます。外を歩き回るのに疲れたら、屋内で縄文人の歴史について学べます。ここでは、粘土で自分の土偶を作る土偶手作り体験にもチャレンジできます。寒い雪の日にはもってこいの素晴らしい体験ですよ!
三内丸山遺跡を訪れたあと、英語対応タクシーに乗って新青森駅まで行き、函館行きの北海道新幹線に飛び乗りました。私は日本の新幹線に乗るのが大好きなんです。日本の新幹線は単なる移動手段ではありません -- 旅の体験の一つと言えるほど素晴らしいのです。特に青森--北海道間の路線は格別です。北海道新幹線は、青森県と北海道の一部区間(約54km)を津軽海峡の下をくぐって走っています。新幹線の快適なシートに座りながら、最大で海底140mの深さを時速140km(平成31年3月16日より時速160km)のスピードで走るなんて、考えたらすごいですよね!
新函館北斗駅に着いた私は函館ライナーで函館駅まで行き、函館朝市でランチを食べました。ここにはイクラやカニ、ウニなど、おいしい地元の特産品が食べられるシーフード・レストランがたくさんあります。私は新鮮なカニがどんぶりの縁から溢れるほど山盛りに盛られたカニ丼を選びました。味噌汁と惣菜付きのカニ丼セットは、外の雪で冷えた身体を暖めるのに最高でした。
縄文時代の歴史を探るという今回の旅行テーマに従って、私が次に訪れたのは「函館市縄文文化交流センター」でした。しかし道中、英語を喋るタクシー運転手の気遣いもあり、湯の川・熱帯植物園の「サル山温泉」に立ち寄ることができました。その日は雪の降りしきる寒い日で、私も正直「サルと一緒に温泉に入りたい!」 と思ったのですが、とはいえ歴史が私を待っています。サル達に別れを告げて、縄文時代の歴史と人々について更に学ぶため、縄文センターへと向かいました。
縄文センターには、矢じりや土偶など、縄文時代につくられた数々の遺物が展示されています。実はこの縄文センターの展示室には、日本の国宝の一つが展示されているのです。それは、この地域で発掘された土偶です。この土偶がどんな目的で造られたのか、さまざまに憶測されていますが、今に伝わる縄文時代の情報は乏しく、正確な消息は分かっていません。しかしながら歴史愛好家にとって、これほど良い状態で何千年もの歳月を生き延びた土偶を実際に見られるのは、夢のような経験です。
縄文センターでの興味深い学習のあと、私はタクシーで函館へと戻りました。当初は函館山に登り、山頂から眺める市街地の絶景を楽しむ予定だったのですが、あいにくの吹雪によって、ロープウェイが閉鎖されてしまったのです。でも、すばらしい観光地の条件とは、予定変更にどれだけ柔軟に対応できるかですよね? そして函館では、まさにそれができるのです!突然訪れた五稜郭タワーから見た市街地の眺めの、なんと素晴らしかったことか! すっかり気分が良くなって、身体も温まりました。五稜郭タワーのあと、タクシーガイドが近くの丘にある、いくつかの市街地絶景スポットに私を連れて行ってくれました。函館山には登れなかったものの、素晴らしい絶景の数々を堪能できて大満足でした!
2日目
「ラビスタ函館ベイ」で素敵な滞在を楽しんだ翌朝、旅の2日目が始まりました。まずは、函館エリアの更なる探検です。北日本に足を踏み入れて以来、ずっと雪が降り続けていたのですが、この日は朝から素晴らしい快晴でした。明るい陽射しのもとで市街地の絶景を見てみたい! と、もう一度五稜郭タワーに行ってみることにしました。有名な函館の路面電車に乗ってみたくなり、五稜郭方面に行く市電に乗り込みました。路面電車は安いだけでなく、市街地の景色や地元の人々の日常生活を眺められる素晴らしい体験です。これ以上素敵な旅の方法ってありますでしょうか? ないですよね!
この朝の「五稜郭タワー」からの眺めはほんとうに格別でした。市街地から山にいたるまで、全てがすっぽりと雪に覆われ、幻想的な朝の情景が目の前に広がります。特に五稜郭公園の眺めは最高で、春にこの公園が桜の花で埋め尽くされたら、どんなに綺麗なものかと夢見ずにはいられませんでした。
このまま何日も函館エリアを探索したかったのですが、帰る時間が迫ってきたので青森に戻ることにしました。でも北海道を去る前に、いくつか経験し残したことがありました。まずは、「道南いさりび鉄道」です。この鉄道は函館湾の海沿いを走る路線で、五稜郭駅から木古内駅を結んでいます。この鉄道に乗るだけで、車窓から眺める海岸線や周囲に広がる山々の絶景が堪能できるのです。終点の木古内駅は、簡単に見逃してしまいがちな小さな町ですが、いろいろ体験ができ、特に地元の生活に興味のある人にはとても魅力的なところです。私は木古内駅に隣接する道の駅「みそぎの郷きこない」に少し立ち寄ってみました。ここでは町や文化について多くの情報が得られるほか、とてもおいしいレストランもあります。お腹が空いた人は「どうなんde’s Ocuda Spirits」に行ってみてください。それほどパスタ好きではない私でも、今まで食べた中で一番新鮮でおいしいパスタでした!
ランチのあと新幹線に乗り、北海道に別れを告げて再び青森県へと向かいました。奥津軽いまべつで下車してバスに乗り、今度は津軽鉄道の駅に向かいました。津軽鉄道は、この地域の観光名所を通過しながら津軽のエリアを走るワンマン列車です。例えば芦野公園は、春には美しい桜の花が咲く有名な観光スポットです。しかし、この日は「立佞武多の館」に行くために、津軽五所川原駅へ向かいました。
立佞武多 (たちねぷた)は、青森に数多くあるユニークな伝統の一つです。毎年夏になると、高さ23mにもなる巨大な山車が(立佞武多の)館を出発し、近隣の通りを練り歩くのです。それぞれの山車はアーティストやボランティアの人々によって、1年がかりで一つ一つ丁寧に手作りされます。この立佞武多の館に来れば山車を間近に見られるだけでなく、山車製作の過程や、シーズンオフに行われる立佞武多祭り関連のイベント情報を知ることもできます。夏祭りシーズンに青森に来られない人でも、ここにさえ来ればお祭りの疑似体験ができるのです。
館の見学を終えたあと、「弘南バス」に乗って青森市へと戻りました。みなさんは、この旅行中に私がずっと公共交通機関を使い続けていることにお気づきでしょうか。これが日本のすごいところの一つなんです。この国では公共交通機関が広く普及しており、ガソリン代や高速代がかかるレンタカーよりずっと安くて便利なんです。特に厳しい冬の寒さで有名な北日本を旅行する時は、経験豊富なプロの運転手に任せた方が楽で安全です。
青森市に着いて、私が最も楽しみにしていたイベントを見ることができました。「ワ・ラッセ西の広場」で行われていたあおもり雪灯り祭りです。「ねぶたの家ワ・ラッセ」と商業施設「A-FACTORY(エーファクトリー)」の間の広場を何百もの雪提灯が埋め尽くし、幻想的なウィンター・イルミネーションが出現していました。雪提灯に加えて、地元の小学生が手作りした紙提灯も飾られており、青森市の大学生が製作したかまくらまであるんですよ! シンプルなお祭りですが、青森ならではのユニークで素敵なイベントでした。
A-FACTORYに立ち寄って少し温まった私は、その後青い森鉄道に乗って浅虫温泉駅へと向かいました。駅に着くと、「浅虫さくら観光ホテル」のスタッフが迎えに来てくれました。ここは日本の本格的な旅館で、青森湾の壮大な景色が見晴らせる和室と温泉、そしておいしい和食が堪能できる宿です。私は少しの間ですが、ホテルで三味線の演奏まで楽しんでしまいました。三味線は日本のユニークな弦楽器で、青森県は特にこの津軽三味線が有名なのです。才能ある奏者の演奏で、長い旅の疲れも簡単に吹き飛び、リラックスできました。もちろん温泉の助けも大きかったですが!
3日目
夜ゆっくり休んで目覚め、おいしい朝食を食べたあと、今回の旅の最終目的地、青森東岸の八戸へと出発しました。縄文時代の人々の歴史をもっと学ぶため、八戸で最初に「是川縄文館」に立ち寄りました。今回の旅で数々の縄文時代関連の施設を訪れましたが、おそらくここが私の一番のお気に入りだったといえるでしょう。展示品が素晴らしく、経験豊富な英語ガイドが丁寧に歴史を解説してくれただけでなく、ここでは見学後に工芸品づくりにまでチャレンジできたからです。子供を持つ親御さんなら、このような手作りの工芸体験が、子供の学びにどれほど役立つかご存知のことと思います。子供にとっては、長く記憶に残る素晴らしい体験です!
八戸の繁華街に戻るバスを待っている間に、是川縄文館の喫茶コーナーで素敵なおばあさんお手製の、とってもおいしいカレーランチを戴きました。このカレーには縄文時代の人々が食べたであろう砕いたナッツやニンジン、卵などが入っていました。もちろん縄文時代のメニューにカレーがあったとは思えませんが、日本の食文化をひねった面白いメニューでした!
八戸に着いた頃には、すでに東京に戻るまで数時間しか残っていませんでしたが、八戸の繁華街をちょっと探索するには十分でした。時間があるなら「八戸 ポータルミュージアム はっち」がお薦めです。ミュージアムという名前が付いていますが、はっちは実のところ、誰もが楽しめる広範なコミュニティセンターです。一つのビルの中に、地域の情報から子供が遊べるエリア、地元の工芸品を販売する小さなお店に至るまで、なんでも揃っているのです。私は有名な地元名産の布を作る、南部裂織体験までさせてもらう事ができました。
はっちのあとに、近くにある「八戸ブックセンター」を訪ねてみました。もちろん本屋を十分楽しむには日本語読解能力が必要ですが、このブックセンターではまるで図書館にいるようにゆっくり座って読書し、どの本を買うか選べるのです。ブックセンターの帰りに、八戸の有名な屋台村、「みろく横丁」までぶらぶらと歩いてみました。電車の時間が迫っていた私は屋台には入りませんでしたが、狭い路地を歩きながら、時間があったら絶対行くのに! と残念に思いました。どんな良いことにも終わりがあると言われるように、悲しくも八戸を後にし、東京への帰路につきました。ありがたいことに、その帰りの新幹線の中で、この数日間の青森県・北海道巡りの旅をじっくりと思い起こし、想いに浸る事ができました。
外国人として、私は以前から日本が大好きでしたが、今回の青森県・北海道の旅は、私の愛情を更なるレベルに押し上げてくれました。青森県・北海道のユニークな文化や食事、そして刺激的な歴史や絶景の数々には、どんな観光客も魅了されることでしょう。特にフォトグラファーの私にとって、これらの場所へカメラを持って訪れられたことは、まさに夢のようでした。実は今回の旅でこの地域がとても気に入ってしまい、近い将来、青森・函館への写真撮影ツアーを企画しようと計画しています (お楽しみに!)。東京や京都など、有名観光地を巡るのもよいのですが、私にとっては、青森や函館の方が「本物の」日本に感じられます。本当の日本人の生活や文化がここには息づいています。日本の美は、ここで真の輝きを見せるのです。いにしえの縄文時代の人々によって、まさにこの地で日本が始まったのです。