おおがわら桜まつり

一目千本桜

東北で有名な桜のお花見スポットといえば、青森弘前城、もしくは岩手の最上公園だろう。しかし多くの人々に見逃されているのが大河原町にある船岡城址公園だ。美しい奥羽山脈から東へゆったりと流れる白石川の岸辺には、1,000本もの桜並木がある。そしてこの場所に独特な風景といえば、小山の上に建つ巨大な観音像だ。この観音像が聳える山から東西に眺める、白石川両岸で一斉に花開いた一目千本桜の光景はまさに圧巻だ。

山の麓からたった20分ハイキングすれば、そこはもう山頂だ。静かな山頂に着くと、まず目に入るのが、白い雪の帽子を被った美しい山々だ。そこからゆっくり視線を下ろすと、8キロメートルもの長さで延々と続く桜並木、そしてその中央を流れる暗色の川が視界に入る。しかし桜にばかり目を奪われてはいけない。他にも山一面に咲く野桜や梅の花、熟練庭師により手入れされた水仙やポピーなど、多様な花々の咲き乱れる庭園もあり、山頂からの眺めはとにかく素晴らしい。もちろん美しい桜の花の力あってこそ、全てが麗しく見えるのかもしれない。ここにある巨大観音像は、日本にある他の素晴らしい仏像に比べるとありきたりかもしれない。しかし桜の花の海を絨毯に聳え立つその様は、並外れた芸術作品へと変化し、実際肉眼で見た人以外には、どんな写真を見ても、この光景の真の美しさを理解することはできないだろう。

船岡城址公園では4月が花見のシーズンだ。町役場によれば、公共の交通機関を利用してほしい、とのことだ。JR大河原駅、もしくは船岡駅から徒歩10分で公園に着く。公園と桜まつりへの入場料は無料だ! また、ハイキングが難しい人にはケーブルカーの準備もあるが、500円の使用料がかかる。出来ることなら車ではなく徒歩で登ってみてほしい。山頂までの道沿いには桜だけでなくいろんな花々が咲き乱れ、とても美しいのだ。さくら祭り期間中は1,000円でボートを借り、白石川沿いの桜並木の景色を2キロメートルにわたって川下りしながら楽しめる。また夜18時~22時の間、桜の花咲く公園全体が山の麓からライトアップされる。

標高 305メートルの山の麓には広々とした祭り用スペースが設けられ、焼き物、揚げ物、お菓子、お土産、甘い桜の香り漂う特製団子などが売られる。「こんにゃく」と呼ばれる地元特産品も試せる。これは「悪魔の舌」という名前の植物の根から作ったゼラチンを焼いたものだ。

仙台駅から電車で南に上ること約40分、おおがわら桜まつりは東北東部の穴場中の穴場だ。今年の春は是非ここでお花見パーティーをやってほしい。弁当を詰め、ピクニックシートは持参、知人友人全てに号令をかけ、カメラ片手に出かけよう。日本には「侘び寂び」という表現がある。ものごとは不完全だからこそ美しい、もしくは儚いからこそ美しい、という意味だ。数週間で散ってしまう桜は、この「侘び寂び」の理想を体現している。春の桜は、ほんの束の間、地球上で一番美しいものかもしれない。この束の間の桜の美を、是非大河原で一度体験してみて頂きたい。

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