徳島: 大塚国際美術館

西洋名画1,000点の精巧なレプリカ!

日本人なら、大塚製薬(株)の名前は聞いたことがあるだろう。ないとしてもポカリスエットやオロナミンCなど、大塚の飲料品を一度は飲んだことがあるはずだ。しかしその大塚製薬発祥の地が、実は徳島の鳴門市だと知る人は少ない。徳島生まれの私は、大塚が持つ鳴門の製品倉庫の壁に大きく描かれたボンカレーの絵を見て育ったと言っても過言ではない。淡路島から大鳴門橋を渡るとまず目に入るのが「大塚御殿」だ。子供の頃、「あれは何?」と聞くと、周りの大人たちが口を揃えて言うのは「あれは大塚御殿だよ。大塚の殿様が住んでるんだよ」という言葉だった。小さかった私はもちろん信じた。後に成人して、あれは単なる大塚グループの保養所で、大塚の社員たちが宿泊する場所だ、と知ってからも、私の心の中では、いつまでたってもあの場所は、大塚の殿様が住む「大塚御殿」なのだ。

ある日徳島の友人が、「大塚の殿さんが御殿の前に、すっごく大きい美術館を建てたよ」と言った。えっ、御殿の前に美術館? 殿さんは鳴門に「大塚スポーツパーク」と呼ばれる巨大運動場を既に持っているではないか。そして御殿もある。なのにどうして美術館? さすがやる事が違う! しかし、すでに騙されやすい子供ではない私は、大人らしくしっかり調べてみることにした・・・王国に巨大美術館を建造するには、殿さんなりの理由があるに違いない (我々地元の人間は「大塚の殿様、殿さん、と呼んでいるわけだが、これは愛情表現なので誤解なきようお願いしたい)。

美術館の歴史
大塚製薬グループは、その設立75周年を記念して、1998年、徳島鳴門の地にこの「大塚国際美術館」を建設した。当初関西地区に建設予定だったが、会社発祥の地鳴門に何か貢献したいという思いから、建築費が2倍に膨らむことも厭わず、この地に造ることにしたという。ちなみに建築時にはこの美術館、そのサイズは日本最大だった (29,412㎡。現在は東京六本木にある47,960㎡の国立新美術館に次ぐ、国内第二の大きさだ)。鳴門公園内にあるこの美術館の建築に当たっては、周囲の自然や景観を損なわぬよう配慮したそうだ (山を掘り、建築後に再び植林して元の景観に戻したらしい)。

美術館のコンセプト
この美術館の最大の特徴、そして他の美術館との最大の違いは、ここに展示されている全ての美術品が複製だ、ということだ。ここには一点たりとも本物はない。大塚グループが持つ最新鋭のテクノロジーを駆使し、本物と同じサイズ、カラーで世界の名画を陶板 (セラミックボード) に転写再現しているのだ。時が移ろうに従い色褪せ損傷する本物と違って、大塚国際美術館に展示されている複製品は、2,000年以上退化することはないそうだ。この美術館は、世界の美術品の最大のバックアップセンターと言えるかもしれない。現在大塚国際美術館では、「システィーナ礼拝堂」から「ゲルニカ」に至るまで、1,000 点以上の忠実に再現された西洋名画が展示されている。

なるほど、我らが大塚の「殿様」、素晴らしい社会貢献を成し遂げたようだ。世界名画の保存に貢献するだけでなく、いろんな理由で海外まで名画観賞に出掛けられない人々の目の保養にもなる。子供達も気軽に世界の傑作美術品に触れることが出来る。大塚美術館で目を養った子供たちが、大きくなって芸術に興味を持ち、海外まで本物を観に出掛けるようになるかもしれない。

ちょっとアドバイス
なんと言っても日本で二番目に大きい美術館だ (全部廻れば徒歩4キロだ)、そして入場料も高い (大人3,240円)。これを考慮すれば数時間では全く足りない。出来れば終日かけてじっくり廻ることをお薦めする。殆ど混むことはないが、仮に混んでいたとしてもこの広さだ、人混みにうんざりすることなどあり得ないだろう。別の記事で、この美術館の作品を紹介している。それも合わせてご覧頂きたい。

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