日光の大自然を眼下におさめる明智平。この場所が日光で1−2位を争う絶景ポイントだということに異論を唱える人は少ないだろう。明智平は、日光市街から中禅寺湖に向かう上りの「いろは坂」の途中にあって(下りのいろは坂からは入れない)、男体山の全景と華厳の滝、そして中禅寺湖を鳥瞰することができるポイントだ。ロープウェイで3分、春はツツジ、夏は緑、秋は紅葉に染まる山々を眺めながら、季節ごとの色彩を楽しみたい。
明智平ロープウェイ
ロープウェイは、天候によっては運休している場合もあるが、基本的に年中無休で、午前9時から午後4時まで運行している(3月1日から15日までは整備点検のため休業)。大人は往復710円、子供は390円。ロープウェイが動き出すと、すぐ下に見えるのがいろは坂である。山肌を削るように、つづら折りの道路が見える。遠くの山並みは日光連山だ。山裾が幾重にも重なり合って美しい。足下に生い茂る木々の合間には、曲がりくねった大谷川の流れ。ロープウェイの終点から数分歩き、360度の視界を擁する展望デッキへ行けば、日光の大自然に抱かれて、まるで空を飛んでいるような気分になれる。
デッキから望む雄大な景観
西に中禅寺湖と華厳の滝。目を凝らして華厳の滝の滝壺付近を見れば、虹がかかっているのが見えるかもしれない。滝の前の白い建物は、有料の観瀑台だ。エレベーターでこの観瀑台まで降りて、迫力ある滝を間近に見ることができる。華厳の滝の右にある、小さな幾筋もの滝は白糸の滝である。そして滝の向こうに満々と水をたたえているのが中禅寺湖だ。そのすぐ右手、東に広がる町は中禅寺温泉。みやげ物屋やレストラン、ホテルなどが建ち並ぶ。さらにその右に見える大きな山が、霊峰・男体山である。運が良ければ、すっきりとした三角形の山容を拝むことができるが、霧の多い日光では、山頂に雲がかかっていることが多い。
明智平について
明智平からの絶景を発見したのは、徳川家康の宗教的参謀として辣腕を振るった天海僧正である。天海がこの場所を明智平と命名した背景については、こんな説がある。織田信長の重臣であった明智光秀は、本能寺の変を起こして主君を裏切った。歴史上では、その後京都で亡くなったとされているが、首実検された光秀の顔は、皮膚がすべて剥がされていた。そのため、亡くなったのは影武者で、光秀は生き延びて延暦寺に入り、出家したと考えている専門家もいる。実際、延暦寺には、光秀という名の高僧がいたという記録が残されているという。その後、光秀は天海と名を変えて江戸に入り、家康の側近として仕えた。天海は明智の名を歴史に残すため、日光随一の展望を誇るこの場所を、明智平と名づけたのだという。