しばし日常を離れる旅は贅沢な時間の消費である。
期待に胸踊る往路。思い出に浸る復路がある。旅はその刹那限りの出会いに満ちているから、その高揚感にかられて私達は旅へと踏み出すのだろう。普段の自分の頑張りへのご褒美としての旅もあろうか。
そうして始める旅は気持ちが高鳴る分、肉体も疲労させる。そんなとき、I love me! のギフトとして、エステで自身の身体をリフレッシュできたら最高だ。
福井市の中心部、大手にあるホテルフジタ福井。以前はワシントンホテルという名称であったこのホテルの2階に素晴らしいエステサロンがある。「サロンカズ」。
オーナー&エステティシャン、加藤和子さんは水の都・大野出身。水のきれいな土地は人をも美しく磨くのだろうか。
和子さん、「冒険心が強くて石橋を叩いて渡るどころか、橋の無いところでもざぶざぶ泳いで渡ってしまうんです。」と笑う笑顔がさわやかだ。しとやかな語り口の奥に熱いエネルギーを感じさせる素敵な女性である。
30歳のとき友人と共に武生でブティック経営を始めたのが和子さんの実業界デビュー。49歳までの19年間、一貫してこだわり追求したテーマは「美しさと健康」だった。それには今は亡きお母さんへの思いがある。病に伏しがちだったお母さんの手や腕をさすったりして触れてあげるとお母さんはとても喜んだ。だんだん母の手に似てくる自分の手を見ながら、「もし今母が生きていたらもっとしてあげたいことがあるのに。」、そんな思いを胸の底に降ろす。
美しいドレスをまとうには、美しい肉体が必要だ。美しい肉体を手にことそれをさらに維持していくためにはしなければならないことがある。
体内に長年蓄積された老廃物を排出し、新陳代謝を促すことである。医者ではないから病気を治すなどということはできない。だが、「手でさすって癒してあげることならできます。未病の人達を癒すことは私のテーマそのものなんです。」と和子さん。
「サロンカズ」は2010年にホテルフジタに移転し、全身エステ、フェイシャルエステ、痩身、コラーゲンマシンも導入のほか、エステティシャンを育てるスクーリングも行っている。人生を支え切り開くスキルとして習得したいと入学してくる生徒に和子さんは個人レッスンで真摯に向き合っている。
では、エステのキーワードとも言えるリンパとは何だろう。
人間の体内には血液とリンパ液が循環している。血液は全身の細胞に酸素と栄養分を運ぶ。一方、リンパは老廃物を運ぶ下水のような役割もしているのである。
通常、老廃物は毛細血管を通じて静脈に取り込まれ、心臓まで戻るが、老廃物が静脈で回収しきれないときはリンパ管に流れ込む。また、リンパは、脂肪の運搬にもかかわっている。痩身エステの意味はここにある。
さらに、リンパ腺は組織液に混ざっている傷ついた細胞、がん細胞、細菌やウイルスなどの異物も集めて運搬する。リンパには、感染に対する防衛機能、いわゆる「免疫機能」があって、リンパ節は細菌やウイルスなどを退治し、健康な体を維持するために老廃物や細菌などを濾し取り、全身に回らないようにするフィルターのような機能があるのだ。
つまり、リンパ節は、生体内に侵入した細菌や有害物質を血液循環中に入れないための関所の役目をしているのである。
血液の循環には心臓という強力なポンプがあるが、リンパ腺には無い。リンパ液は筋肉の収斂などにより、とてもゆっくりと流れている。従って運動が不足したりしてリンパ液の循環が停滞するとむくみになって現れ、身体の免疫機能すら低下させてしまうのである。
リンパ腺はその70%が皮膚の表面に近いところを通っている。だからさするような優しい手のマッサージでリンパ液の循環を促すことが可能なのである。
このように、老廃物や毒素を排出するリンパ液の循環を促す手伝いをしてくれるのがリンパマッサージやリフレクソロジーである。これほどの効果があるのであれば女性の痩身美容だけに限定するのはとてももったいない。男性も健康増進に積極的に利用すべきだろう。
「サロンカズ」はオープン当初から男女どちらも受け入れてきた。実際、上は70代の男性の客もいるという。人間の身体機能をよくご存知の素敵な方だなと私なりに想像している。
マッサージは国家資格である。一方エステは民間資格だから、エステでは治すとか効くということは薬事法上言わない。しかし既に触れたように、深い意味での「美しさと健康」の追求にエステは十二分に期待できるものだ。
和子さんには嬉しいエピソードがいくつもある。
そのうちの一つ。以前、ホテルの或る宿泊客が来店した。40代の男性で、次の日に講演があるという。「仕事前のリフレッシュに良いから行ってきたら、と妻が勧めるものだから来ました。」と照れながらに入ってきたという。一時間のエステの後、彼は感慨深げに言った。「人の手というのは素晴らしいですね。手で触られたから伝わった。人の手だから伝わった。人の手の力を感じました。」そう言って帰られたそうだ。何よりの嬉しい言葉である。
もう一つ和子さんが大切にしている思い出がある。2012年のことだ。小室哲哉さんの奥さんが来店した。彼女は「globe」のボーカリスト、KEIKOさん。夫がハーモニーホール福井でのピアノコンサートで来福しホテルに宿泊した折りに店を訪れた。和子さんのエステに喜んだKEIKOさんは感謝の言葉を綴った小さなカードを和子さんに贈った。和子さんはそれを財布に入れお守りのように大切にして、つい最近健康を失ったKEIKOさんの快復を願っているという。
清々しい気が流れている「サロンカズ」。それは加藤和子さん初めスタッフから溢れ出る「癒す」気なのだろう。