福井・三国町にある「福井県畜産試験場」は県内の農畜産業発展のために種々の研究に取り組んでいる公の専門機関である。
が、近年行政の情報公開の流れの中で、広く県民に親しみを持ってもらおうという意図から昨年(2012年)「なかよしとんがり牧場」という愛称のもと、動物放牧場を開放し始めた。
家族で福井・三国辺りを観光する機会があるなら、訪問地としてこの牧場をリストに加える価値は十二分にある。
子は鎹(かすがい)、とはよく言ったものである。
元々他人の夫婦を取り持つだけでなく、親としての自身の人生を家族に繋ぎとめる力ともなる。
だがこの子育てを楽しめる時期はまことに短い。
小学校5,6年生になる辺りから子供は親からもぞもぞと離れ出す。
当然とは言ってみても親としてみたら寂しいものである。
ディズニーのアニメ映画「ピーターパン」の中で、ダーリング家の主(あるじ)ジョージにその妻メアリーがやさしく語りかける言葉がとても印象的で私は忘れないでいる。
「あなた、(ウェンディーたち)子供はすぐに大きくなってしまうものよ。子育ての時間は短いわ。楽しまなきゃ。」
仕事に忙殺・没頭しているお父さん方には耳の痛い言葉だ。
しかし、言い得ている。
お父さん!
まだ子供が親にすり寄ってくる時期に子供と一緒に出かけようではないか。
しかし、デジタルな仕掛けの遊園地などは刹那的な高揚だけの泡沫に終わりかねないものだ。
子供と過ごすなら絶対にアナログの世界なのである。
匂い、手触り。
こういうものが動物を通して味わえるならなおいい。
もう私たちの普段の生活の中からは大中型の動物はほとんど消えかかっている。
だから動物を怖がる子供が実に多い。
だが実際のところ、子供は動物が大好きだ。
知らないだけなのである。
最初は腰が引けていても臭いや手触りに慣れてくるとどんどん前のめりにその動物に近寄っていく。
「なかよしとんがり牧場」には広い牧草地にヤギとヒツジが放し飼いになっている。
畜舎をくぐってその牧草地に入ると、好奇心旺盛なヤギがまず近寄ってくる。
ヒツジは臆病でシャイな動物だから、寄ると逃げる。
餌やりを体験したり、牧草地でヒツジを追いかけたり。子ヤギをだっこしたり。
日がな一日子供が本当に子供らしい笑顔で過ごすのを見て親は楽しめる。
ゲームやジェットコースターなんかよりずっと濃い親子のふれあいになること請け合いである。