離山房でノルウェイの森を歌う

軽井沢とジョン・レノンの秘密

軽井沢は、日本の中部地方にある山間部の小さな町。20世紀はじめ、東京のうだるような夏の暑さを逃れ、ゆっくりくつろげる場所を探していた宣教師たちによって発見された。それ以前は、京都と首都江戸をむすぶ旧街道・中山道にある小さな宿場だった。年月を経て、保養地として人気の山間部の避暑地となり、そこを取り囲む森の中には、楽しく過ごせる小さな喫茶店や雑貨店がたくさんある。

ある一家、小野家もここに夏の別荘を持っていた。彼らはよく、森や丘でサイクリングをしたり、湖や滝などに出かけたりして日々を過ごし、平和で静かな時間をありのまま満喫していた。それから家族の一人、洋子がイギリス人の男性と結婚した。彼女は軽井沢でのお気に入りの喫茶店「離山房」へ夫をよく連れて行き、彼もそのオーナーと親しくなった。この記事に載っている写真が撮影された一年後、彼はニューヨークの路上で、見ず知らずの人間から5発の銃弾を浴びた。今日この場所で、一杯のコーヒーを飲みながら、私は思うのだ。「なんてもったいない…なんて粗末なことを…」と。

ジョン・レノンは軽井沢での滞在を楽しんでいた。高速道路によって国内の移動がうんと早くなる以前は、東京から車で5時間以上の場所。そこでは、彼は無名に近い人間になれたのだった。不思議にも私はよく、オノ・ヨーコをイギリス人だと思ってしまう。ヨーコとジョンはロンドンで出会ったけれども、彼女は日本人で家族は日本に住んでいる、ということをすぐ忘れそうになる。この町を歩き回っていると、数多くの小さなバーやカフェで、ジョンの普段の様子を映した写真が見られる。軽井沢では、彼は普通の男に戻ることができたのだ。

離山房のスタッフはとても親しみやすく、ジョンたち家族と仲良くしていた女性は、今でも時々そこで働いている。離山房へは二通りの行き方がある。軽井沢で自転車をレンタルし、ジョン、ヨーコ、ショーンが通ったルートを辿ることができる。昔の中山道にあたる国道18号線に沿って西方面へ進み、軽井沢中学校が見えたら左折して森の中へ。そのまま1キロほど進むと、右側に離山房が見える。あるいは車で行くなら、高速道路を降りて山道を上り、国道18号線の新道・軽井沢バイパスのほうへ左折。シェルのガソリンスタンドが見えるまで数キロ進む。ここで右折し、そのまま少し進むと左側に見えてくる。もしギターを持っているなら、ポーチで紅茶を楽しみ、ノルウェイの森を歌ってみては。

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