御苑界隈にはかつて貴族たちの邸宅が立ち並んでいた。
明治維新とともに天皇は京都から東京へ移り、それとともに公家たちも東京へ移り住んで、御所東の公家たちの邸宅は次々と遺棄された。
その跡地に、維新の偉業をたたえて三條実萬(さねつむ)、実美(さねとみ)父子を祭る梨木神社(なしのきじんじゃ)が建立されたのは、歴史的には比較的新しいことだ。
神社は御宮様ともいう。
私たちのふるさと、それはつまり私たちが生まれ出たところを指す。
参道は産道であり、お宮は子宮。
つまり神社に参るというのは産出の源、母、そして自然、あるいは大きな宇宙への感謝の思いを奉げることなのかもしれない。
芽吹いたばかりの若葉の青い枝のあわいから日差しが梨木神社の細い参道を存分に照らしている。
自分の日影を踏みながら二つ目の鳥居をくぐると、京都三名水の一つと謳われる「染井の井戸」が見える。
三名水で唯一、今もなお湧水があふれる「染井の井戸」は、その甘露を汲みに訪れる人でにぎわう。
軟水なのでコーヒー、緑茶どれを入れてもとても美味しい。