「能」は、600有余年の昔より日本の伝統芸能として今に継承されており、未来に必ず残したい文化の一つだ。こしがや能楽堂は、天然の木曽檜造りの屋外能舞台。その佇まいに背筋が伸びて、気持ちが清められる。能は、歌舞伎や人形浄瑠璃文楽とともに、正式にユネスコの無形文化遺産に指定されている。
展示室には、般若などの能面や、装束・太鼓・扇などが展示されており、それらをガラス越しに鑑賞することが出来る。能舞台と同じ木曽檜から彫って作られる能面は、見る角度によって様々な表情に見える。眺めているだけで、その面に託された人間の感情や背景などが伝わってくるような気がする。
能楽堂に隣接する「花田苑」は、純和風廻遊式池泉庭園である。一周する中でドラマチックな展開に出合うようになっている。園内には梅・桜、松・楓など、14000本もの植林がされており、四季折々の美しさで心が潤う。庭石が絶妙なバランスで配置されており、何とも風流だ。池の水面には葉陰や流れる雲が映り込み、そこを紅白や黄金色・白銀の錦鯉が悠々と泳いでいる。これら全て景色の一部として計算されており、その繊細で緻密な日本の美意識が感じられる。
空高く伸びた竹林の中を歩けば、その静寂に心洗われて感性が研ぎ澄まされる。梅雨のこの時期、中でも一番美しいのは苔のむす小径や石畳だ。園内を一望できる築山からは滝が流れ落ち、そのせせらぎは心地よい響きとなって癒やしとなっている。玉砂利の小径を踏みしめる音や木橋を渡る時の軋む音が、どこか童心に戻って楽しい。
能楽堂では、大人の趣味と教養シリーズとして、数寄屋造りの茶室「開花亭」での茶会や、はじめての箏曲体験会などを実施している。茶道を通じて、親子で挨拶などの礼儀作法についての体験も出来る。また能楽体験教室など、広く一般の方にも、謡い舞い鼓を打つ体験が出来るようになっている。
ここで能の舞台を見てみたいものですね…。