浅間山の麓にたたずむ瀟洒な洋館、旧三笠ホテルは、かつて「軽井沢の鹿鳴館」と呼ばれた社交場でした。1886(明治19)年に、カナダ生まれの英国聖公会の宣教師、A.C.ショーが「屋根のない病院」と呼んで感動し、一夏の休養をここで過ごして以来、軽井沢は欧米人に人気の避暑地となりました。その後、海外経験のある財界人や、皇族、貴族が次々に軽井沢を訪れるようになり、1906(明治39)年に開業した豪華なホテルが三笠ホテルでした。客室はわずか30室、定員40名で、プール、水洗トイレ、電気で灯る美しいシャンデリアなど、当時の日本では考えられないほどの贅を尽くしたホテルだったようです。軽井沢駅からは、なんと黒塗りの馬車が宿泊客を送迎していました。