日本酒は、どぶろく等の濁り酒に対して「清酒」とも呼ばれる。
日本の名だたる日本酒醸造地の中でも、京都、特に伏見はその歴史と規模から見て、日本酒の聖地と呼んでも過言ではないだろう。
天皇貴族への京料理に合わせるべく磨かれてきた京都伏見の酒は女酒と呼ばれるほどに甘く柔らかい口当りが特徴である。
しかし京都郡部の、山あいの、あるいは丹後など周辺の蔵元が醸す酒はなかなか男性的な味わいの酒も多く見られる。
京都伏見には「油長(あぶらちょう)」という名店がある。
ここでは伏見の酒がほぼすべて楽しめる。
試飲愛好の居酒屋とでも言おうか。
一方、烏丸四条を下り仏光寺通を西に折れてすぐの「京都酒蔵館」では伏見のみならず、京都府全域の酒が飲めるとあって、日本酒ファンなら垂涎の店として最近じわじわと存在感を増しているようだ。
ネーミングが惹きつけることもあろうか。
何だか公営の博物館のような響きなのである。
だが、実は居酒屋。
さっそく、暮れなずむ京都ぶらぶらの最中、店に訪(おとな)いを告げた。
こちらでユニークなのは、15種類の蔵元の酒をまとめて試飲できるメニューがあることだ。
「15蔵 利き酒セット」!。伏見と北中部の2種類。
量も2合だからちょうど良い酔い加減になる。
油長で伏見酒はたっぷり味わっているので、迷わず北中部を注文。
日本酒度も-18の超甘口から+8の辛口までいろいろだ。
データを見ずに飲んで一番印象的だったのが、「初日の出」!
羽田酒造(洛中)の純米酒で、日本酒度-1。ほんのりとした穏やかな甘さがとても良い口当たりである。
若干の甘口だが酸とのバランスが良く、むしろ芳醇さとふくよかさがあって美味しさぴか一だ。
当然、お代りを1合頼む。
お店の笑顔の可愛い女性がグラスになみなみと注いでくれた。
アテも実に美味しい。京ゆばなんて最高だ。
店に入る前まで足先に食らいついていたはずの冷気はすっかり酒にほだされてしまっている。