藤田喬平ガラス美術館は、ガラス工芸作家、藤田喬平の珠玉の名作を展示する美術館だ。彼の創り出す美しい球形の作品がギャラリーの薄暗い照明の下で光り輝く。中でも来場者の目を釘付けにするのが、滴り落ちる溶融ガラスで出来た「飾筥(かざりばこ)」や花瓶の作品群だ。彼の作品はニューヨークのメトロポリタン美術館など海外でも展示されている。その理由は一目瞭然だ。藤田は2004年、80代半ばで逝去したが、彼の作品はそのデザインや造形において、現代作家の作品と比べても優るとも劣らない、不朽の名作なのだ。
入場料を払った後、柔らかい、平穏な光に包まれたトンネルを進んでいく。トンネルの先にはガラス製の板があり、その板をぐるりと回り込めば最初の展示物に遭遇する。そこにはまるで白い溶融ガラスを噴き出しているかのような巨大な赤い花瓶がある。その色とイメージは火口から溶岩を吐き出す火山のようだ。作品名もイメージに相応しく「流 (ながれ)」と題されている。未だかつてこれほど見事に躍動感を表現したガラス工芸品を見たことがない。この作品を見ただけで、これはいける、と期待が膨らんだ。
他のギャラリーも全て藤田の作品を展示している。作品を一つ一つ見るたびに、あまりの奇想天外さに仰天し、笑みを禁じ得なかった。驚くべき曲線、その正確さ。花々や果物、箱、全てが素晴らしい。そして作品の多さにも度肝を抜かれた。結局戸外の庭園やギフトショップ探索も含めると、殆ど1時間もこの美術館で過ごしたことになる。また館内には鏡の間があり、いろんな角度から同時に自分の姿を見ることが出来る。この部屋ではガラス工芸品が展示されることもあり、規模は小さいが面白い趣向だ。多様な色とデザインの作品群に出会える藤田喬平ガラス美術館、家族連れやカップル、そして子供でも楽しむことができるだろう。
この美術館を訪れるには松島まで行く必要がある。美術館は「松島 一の坊」ホテル内にある。「ホテル壮観」など他のホテルでは、よくロビーのテーブルに美術館の割引券が置いてある。入館料大人1,200円なので、是非割引券を利用してほしい。素晴らしい芸術作品に加え、藤田喬平の紹介ビデオ上映や地元アーティストの造ったガラス工芸品を販売するギフトショップも必見だ。