日本一高い山ってどれ? と聞かれたら、誰でも答えられますよね。でも日本一低い山ならどうですか? その答えは1991年から1996年のあいだ、標高6.05メートルを誇る仙台の日和山でした。
でもやがて大阪の天保山が、仙台の田舎町にあるこのちっぽけな山から「日本一低い山」という栄誉を奪い去ってしまいました。その後20年にもわたって、天保山はその身の「低さ」を自慢しつづけ、あろうことか登山者に「日本一低い山」に登ったことを証明する「登山証明書」まで発行し、天保山を一大観光スポットへと変身させてしまったのです。しかし、2011年3月11日に発生した大地震による大津波が、すべてを変えました。何千もの人命を奪い、家々を破壊し尽くしたこの大災害の結果の中に、お祝いできるものなんてあるはずもありません。でも、このあり得ない災害からあり得ないシナリオが生まれたのです。この地震によって、日和山の標高がかつての半分ほどまで低くなり、2014年4月、この山が再び日本一低い山であることが確認されたのです。
ここで読者のみなさんは、一体山の定義はなにで、大きな丘と小さな山の違いは何なのか、疑問に思っているかもしれません。答えが分かったら是非私にも教えてください。私はどうしてみんながこれほど大騒ぎするのか確かめたくなって、この小さな山を登りに出かけました。ここでまずはじめに知っておくべきことは、この日和山は簡単には見つからないということです。もっと有名な日和山が近くの石巻にあり、ここから車で25分ほど離れた閖上にももう一つあります。この閖上地区も津波で被害を受けた地域です。日和山を見つけるには、この記事の地図を参照するか、私がしたように地元の人に尋ねてみてください。今現在ここに行くのに公共の交通機関はないので、一番良い方法は仙台駅から30分ほどドライブすることです。実際に見る日和山の高さはあいまいで、積み上げられた石と、ここが目的地であることを訪問者に示す大きな標識がなければ、これが果たして日和山なのかどうか分からないほどです。
仙台のこの地域は蒲生とよばれ、かつてはバードウォッチングの名所として知られた美しい干潟でした。その美しい景観のほとんどは津波で流されてしまいましたが、少しずつ自然の姿を取り戻しつつあります。大阪の天保山と違って、ここには観光戦略はおろか全く何もありません。でも少なくとも「日本一低い山」に登ったぞ! とは言えます、私みたいに。キリンビール仙台工場から少しドライブした後に、かつての住宅地で今は補修された道路だけが残る細い道を下れば、そこが目的地です。木の階段跡が登山口となっています。身体をよく伸ばし、水分をたっぷり補給して、これから始まる5~10秒間の登山に備えましょう。そこには海抜3メートルの標高を誇る山が高々と聳えているのですから。とはいえ、登山のあいだ酸素レベルは非常に安定していました。周囲のほとんどはまだ工事中ですが、登頂後には近くで穏やかに凪ぐ美しい海も見えます。
かつての日和山は、沖を行き交う船の監視と漁師の天候調査のため、江戸時代に人工山として造られました。それから何百年もの時を経た今、日和山は全盛期以上に誇らかに聳え立っています。そんな日本一低い山に、あなたも登ってみませんか? 面白い写真を撮って友達とシェアできますよ!