かつて映画「ジュラシックパーク」を見たときの感動はとても鮮烈だった。
琥珀に閉じ込められた太古の時代の蚊から恐竜の血液を採取し、そのDNAを元に恐竜のクローンを作りだす、というまことしやかな筋立てだった。
恐竜考古学は、地中から掘り出される恐竜の化石を復元してその全身を肉付けし、その生態も周囲の化石などの証拠を元に類推する。
恐竜が全盛期であったジュラ期、白亜期の地層は日本では手取層群だ。
この手取層群は現在の石川県、富山県、岐阜県、そして福井県にまたがっている。
とりわけ、福井・勝山市北谷は、恐竜の墓場ではなかったかというほど、恐竜の化石が集中しているのだ。
この地層で1989年から発掘調査が始まった。
やがて恐竜の全身骨格が出土。
さらに発掘を進めると恐竜の化石がどんどん出てくる。
現在の「福井県立恐竜博物館」はこのような気運を受けて計画が持ち上がり完成したものだ。
しかしこれまで自治体が作る箱もので成功した例はきわめて稀有だった。
来場者、入場者というのは浮気で移り気なお客様だ。
だからそのような客の気持ちを長年にわたって掴み続けるのは並大抵のコンセプトでは無理なのである。
そのような現実にあって、この「恐竜博物館」は2000年の開館以来13年、初期の数年間の低迷期を除いて、毎年50万人以上の入場者を迎える大人気博物館に成長したのだ。
発掘調査の多大な成果もあって、世界に数少ない恐竜博物館として、「福井恐竜博物館」は、カナダにある「ロイヤル・ティレル古生物学博物館」、中国にある「自貢恐竜博物館」と並んで、世界三大恐竜博物館と言われるまでになっている。
勝山の街からスキージャム方面に右折すると左側に銀色にまぶしくかがやく巨大な恐竜の卵のような建物が見えてくる。
子供連れならここで子供たちから歓声があがる。信号を左折し博物館の敷地に入り坂道を登っていくと、土手に恐竜の骨らしきオブジェが。なかなか演出が上手い。
そして博物館前に到着すると、首長恐竜の巨大なオブジェが迎えてくれる。
本館建物は黒川紀章氏の設計。美しく斬新な建築物である。
館内には所狭しと化石、標本、ジオラマや復元模型が展示されていて、刹那、太古の恐竜の棲む森に足を踏み入れたような高揚感がこみあげてくる。
巨大な恐竜の動画もスクリーンに映し出されて、子供だけでなく大人でも深い意味で十分に楽しめる内容だ。
これが民間だともっとアミューズメントパークになるのだろうが、学術的な切り口から真面目に取り組んでいる博物館だから、逆に質を高く保てたのかもしれない。
今や、恐竜ファンの子供にせがまれてやってきたと思しきファミリーが全国から集まるようになった。
福井県も勝山市もその観光としての起爆剤としてさらにこの博物館を進化させようと取り組んでいるようである。
CGの発達、ロボット技術のさらなる高度化を時代が獲得すれば、まさに本物と見まごう「福井ジュラシックパーク」がこの30,000㎡の敷地内に出現する日は近い。