日が沈んでからかなりの時間が経過した後も、静かな田舎道を何時間もドライブしていた。ようやくある湖の側で車が停まった。湖面に映る月と星と森のシルエット。私と私のパートナーが東京から札幌までヒッチハイクをしながら旅をしている途中の出来事。私たちを拾ってくれた親切なドライバーには、その湖に到着する数時間前に「どこでもいいからキャンプの出来るエリアで下ろしてください」と伝えていた。
車が去った後、木々の間にテントを張れるスペースを見つけた。少し先にもう一組キャンプをしているグループがいた。かすかに聞こえる笑い声、キャンプファイアーの灯り、食欲をそそるおいしい匂いは、近からず遠からずのちょうどいい距離から伝わってきた。長い1日を送った私たちは、薄暗い中まもなく眠りに落ちた。
翌朝、強い日ざしと鳥達の合唱と共に早くに目が覚めた。テントの入り口のファスナーを開けると、思いもよらないほど美しい猪苗代湖が突然目の前に現れた。静かな水面は朝の光でキラキラと輝いていた。湖に近づくにつれ、昨夜見知らぬ私たちを拾ってここに案内してくれたドライバーに感謝した。彼なしではこのエリアで下りる事もなく、私たちはただ通過していただろう。次に向かうまで時間はたっぷりある。透明に輝く湖で泳ぎ、その後はカメラを片手に湖畔を散歩した。
日本で4番目に大きい猪苗代湖は福島県の真ん中に位置し、磐梯朝日国立公園の入り口にあたる。磐梯山を映す湖は別名は天鏡湖。磐梯山の噴火により大昔に形成された。湖水は酸性を示すため、植物は育たず透明で美しい水が生まれた。
私が猪苗代湖を訪れたのは夏の終わりだったけれど、ここは四季を通じ違う表情を持つため、いつ訪れてもいい。春は、鳥や野生の植物に溢れている。夏は、美しい水に飛び込んで水浴びをしたりウォータースポーツをしたりするチャンスに恵まれる。秋は、湖面に映る紅葉の色にため息をつく。冬は、近くのスキーリゾートに滞在したり、湖に渡ってきた何千もの白鳥を眺めたり。もし寒さに凍えるならば、磐梯山の麓の温泉につかりながら湖を眺めるのもよい。
最後に文化的側面から一言。猪苗代は野口英世の生誕地でもある。彼は細菌学者として多大な功績を残している。黄熱病の研究でよく知られており、現在日本の1000円札に彼の肖像が記載されている。彼の人となりをもっと知りたいなら、野口英世記念館を訪れてみるのもいい。