京都 青蓮院

回廊巡りを楽しむ京の寺 4

Tomoko Kamishima   によって

地下鉄東西線「東山」駅からゆっくり歩いて5分ほどのところに、青蓮院(しょうれんいん)という、とても美しい寺院がある。1150(久安6)年に創建された青蓮院には、時代の変遷とともに作られた3つの庭があり、それを建物の内外から鑑賞することができるのが特徴だ。京都の寺社では、管理のためか、建物の中からしか庭を見ることができなかったり、逆に庭を回遊することはできても、建物内部は公開していなかったりすることが多い。しかし、青蓮院の庭は、座敷に座って眺め、回廊を歩きながら眺め、そして園路を歩きながら眺めることができるのだ。特に、華頂殿に面する「相阿弥の庭」は、起伏に富んだ池泉回遊式の庭で、築山と木々の配置の妙は一見に値する。この庭を作ったとされる絵師・相阿弥は、伝承では、銀閣寺や大仙院の書院なども手がけたという。

回遊順路

1) 建物に入り、華頂殿から「相阿弥の庭」を眺める。その後、コの字型の回廊を歩いて奥に進み、様々な角度から庭を楽しむ。

2) さらに回廊を進み、宸殿前に広がる苔の庭を鑑賞する。

3) 最後に、庭に降りて「相阿弥の庭」、小堀遠州作と伝えられる「霧島ツツジの庭」を巡り、背後の丘に登って全景を眺めてから、もう一度苔の庭を見る。

華頂殿

建物に入ってすぐの座敷が、華頂殿という名の客殿である。まず息をのむのは、60面の真っ白な襖に描かれたモダンなデザインの蓮の花だ。それだけでも見事な装飾であるが、鴨居の上には三十六歌仙の額絵が飾られ、室内を明るく彩っている。座敷の奥に進み、部屋の中央に座る。冬の日ならば、暗い室内に差し込む光に、すっぽりと包まれる感覚はこの上なく心地よい。訪れる人の多くは、じっとこの光の中に佇んで動かない。私もそうだった。静かに流れる時間の中で、ただぼんやりと庭を眺めながら、暖かい光を感じて過ごした。

コの字型の回廊

華頂殿から「相阿弥の庭」を堪能したら、部屋を出て回廊を歩く。庭の奥へ、奥へと進んでいくと、見る場所によって石や木の表情が変わっていくから不思議だ。小御所と本堂を過ぎれば、そこが最奥である。「相阿弥の庭」と反対側に渡り、鮮やかな苔の庭を見た後、一度戻って宸殿へと移動する。

宸殿

宸殿は、重要な儀式が執り行われる場所である。部屋の中央部分は、房飾りのついた赤い御簾で仕切られている。前庭には左近の桜、右近の橘が植えられていたが、御所の紫宸殿などに敷き詰められている白砂の代わりに、ここでは一面が柔らかそうな苔で覆われていた。苔の緑が目に優しい。

園路

建物の入り口まで戻って庭に出る。華頂殿の前を通って「霧島ツツジの庭」(江戸時代)を歩き、「相阿弥の庭」(室町時代)を通り抜けて裏山に登る。一番上までいくと、寺域全体を見渡すことができて気持ちいい。深呼吸すれば、森の匂いが体にしみわたるようだ。その後は、下って美しい苔の庭(平安時代末期〜鎌倉時代?)を眺め、鐘楼の脇を通り、出口へと向かう。

相阿弥

相阿弥(1459?-1525)は、足利将軍家に仕えた同朋衆の一人である。絵師であるとともに、鑑定家、連歌師、作庭家などとしても活躍したマルチな天才だったようだ。絵師としての相阿弥は、祖父・能阿弥、父・芸阿弥から続く阿弥派の絵画を大成させた巨匠で、当時としても別格の扱いを受けていた。現在、相阿弥の作品は、アメリカ・メトロポリタン美術館やクリーブランド美術館にも所蔵されている。

このシリーズについて

王朝文化に華やいだ平安時代(794-1185)、中央貴族たちは寝殿造の屋敷に住み、季節ごとに変わる庭の美しさを楽しみました。当時の建物には壁がなく、外周は蔀戸や妻戸のみで仕切られていたため、それらの戸をすべて開放すれば、室内と外の自然とが、たちまち一体となりました。建物をつなぐ回廊は、細い柱で屋根を支えた廊下です。ここもまた、雨や雪にぬれることなく、外の景色を楽しむことができるという点で、内外が一体化した空間でした。残念ながら往時の貴族屋敷は残っていませんが、平安時代に創建された寺院の中には、その面影を見ることができます。

このシリーズでは、内であって外でもある回廊に焦点を当てて、京都のお寺を訪ねてみたいと思います。

1 永観堂(853年創建):上へ上へと伸びていく垂直回廊

2 大覚寺(876年創建):どこまでも続く迷宮回廊

3 仁和寺(888年創建):鍵型の回廊と2つの庭

4 青蓮院(1150年創建):コの字型の回廊と3つの庭

回廊巡りを楽しんだ後は、禅宗とともに発達した枯山水の庭園や、武家の庭である回遊式庭園を訪ねてみてはいかがでしょうか。京都の作庭家シリーズでは、名庭と作庭家についてご紹介しています。

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Tomoko Kamishima

Tomoko Kamishima @tomoko.kamishima

Japan is a small island nation, but we have a huge number of surprising things to discover here. Many of these delights can be found when you step off the main street onto small side paths. I really enjoy studying about and researching various aspects of traditional Japanese culture, and then sharing this information with visitors to Japan. I hope you will enjoy it, too! ARTICLE INDEX & PHOTOS:  An index of most of my Japan Travel articles can be found at the entry page of my blog, and my photos are shown here.  日本はとても小さな国ですが、大通りから一本小道に入ればたくさんの発見があります。日本人が積み重ねてきた歴史を学びながら、古い建物や庭を訪ね、物語の舞台となった景色を眺めて、皆様といっしょに日本文化の奥深さを探求していきたいと思います。

Tomoko Kamishima

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