JR東北新幹線 グランクラス

新幹線最上級クラスで、ちょっと贅沢な旅

Takako Sakamoto   2014/01/04によって

2014年正月の帰省で、東京から仙台、といっても私の実家は仙台と東京のちょうど中間辺りの、白石蔵王にほど近いド田舎なのだが、なぜか東北新幹線グランクラスなるものに乗る羽目になった。顛末はこうだ。

顛末、と大仰に叫んでみたものの、なんのことはない、要するにチケット予約を忘れていて、気付いた時には指定席は満席、グリーン車すら取れず、仕方なくグランクラスを買う羽目になった、というだけのことだ。年末帰省といえば、バカでかい荷物を引っ提げての旅行である。そんなもの、列車によっては200%を超える乗車率の自由席に立ちっぱなしで帰れるわけがない。

というわけでグランクラスチケットなるものを購入した。しかし、グランクラス・・・・なんじゃそれは!? 聞いたこともない言葉なのだ。言われるがまま高額料金を泣く泣く支払うかたわら、興味津々で調べてみた。新幹線はJR各社が地域ごとに運営し、九州新幹線、山陽、東海道、東北、上越、北陸新幹線と、日本列島を縦断して走っているが、このグランクラスという座席、どうやら東北新幹線のみに導入された新しいクラスのようなのだ。どうりで聞いたことがないわけだ。ちなみに他の新幹線最上級クラスはおなじみグリーン車である。

西日本生まれの私にとって、新幹線といえば「ひかり」に「こだま」、そしてその後導入された「のぞみ」で、東海道新幹線こそが王道である、と信じ込んでいた。が、他地域に転居してみると、なにも「のぞみ」ルートだけが日本の新幹線を代表するわけじゃない、新しく開通した九州新幹線も凝った作りのようだし、東北新幹線で生まれて初めて2階建て車両を目にした時には度肝を抜かれたものだ。そして今回のグランクラスである。否が応にも期待は高まろうというものだ。

帰省客で混雑する12月29日夕刻の東京駅、しかしグランクラス車両前プラットフォームは比較的閑散としている。というのも、これは乗車後気付いたことだが、1車両に座席が15席しかないのである。期待に胸を膨らませつつ車両清掃が終わるのを待つこと数分、車両の扉が開く。通路全体が木目調だ。客車内に入ると、何色というのだろう、白とクリーム色の中間色の近代的レザーシートが目に飛び込んできた。何やらスポーツタイプのBMWの革張りシートのように見える。本物のレザーなのかフェイクなのか、ちょっと判別が付かない。JRグランクラスホームページの説明によると、「一部合成皮革を使用している」とのこと。一部??!

そして座席は前述したように1車両15席しかない。片側1席×5列、片側2席×5列だ。ちなみに全車両中、グランクラス車両は1車両のみだ。そして座席ナンバーの「4」の数字はご丁寧にも除かれている。「4」は「シ→死」を意味し、縁起が悪いからだ。なんとも日本的な気配りではないか!

座席は一見すると国際線飛行機のビジネスクラスのようで、電動リクライニングシートを採用しており、これも車の座席を連想させる。荷物を置く上部の棚は、網棚ではなく飛行機の荷物棚のように扉がついている。おしゃれな車内用スリッパも各座席に用意され、靴を脱いでリラックスできるのは飛行機のビジネスクラスと同じだ。車内の様子については別に書いた写真エッセイをご参照頂きたい。

ここで特筆すべきは、このグランクラス、ドリンクがアルコール類も含め飲み放題だということだ(注: 路線、号車により、飲食・アテンダントサービスがないものがある。予約前に要確認)。そしておつまみと軽食までもが付いてくる。おつまみは乾き物(おかき)とカステラ、一人1個ずつ、軽食は和食(弁当系)もしくは洋食(サンドイッチ)いずれかから1つ選べる。そしてドリンクだが、ビールを頼めばヱビスビールが出てくる。ワインも赤白あり、なかなか上等な味がする。これがおかわり自由だというから最高ではないか! しかもスタイリッシュな制服に身を包んだ客車専任アテンダント(可愛い女性)が常時気を配ってくれ、私の乗車時には2人のアテンダントが15人の乗客にサービスを提供していた。サービスの質はJALのフライトアテンダントに勝る。これはJALアテンダントの国際的評価を勘案すると、このグランクラスに乗れば、世界最高級のサービスが受けられると言っても過言ではないのである。

言うまでもなく、ノンベな私は上機嫌で飲んだくれた。なにせ東京の人混みに揉まれ疲れ切った後の飲み放題なのだからご勘弁願いたい。実家到着後夕食さえ待っていなければ、おつまみに軽食、おいしいお酒を心ゆくまで堪能できたのだが、そういうものが供されるとは夢思わなかったので、中途半端な時間に乗車してしまい(夕方)、ここで出来上がってしまうことが許されなかったのが残念である。

かつて新幹線には食堂車なるものがあった。ビュッフェ車である。新幹線の乗車時間が未だ長かった時代、乗客の便宜を図るため導入され、乗客は車両内のレストランでゆったりと飲食しながら旅をした。しかし新幹線のスピードアップによる乗車時間の短縮、また乗客の飛行機旅行への転換に伴い、食堂車は廃止となった。テクノロジーの向上により、日本人は時間に追われる忙しい旅を半ば強いられるようになったのだ。しかし昨今、「ゆとり旅」への回帰現象が少なからず見受けられる。JR九州が最近導入した「クルーズトレイン」など、その最たるものだ。なるほど高額には違いないが、たまには時間とお金をかけて、ゆっくりと贅沢な旅をしよう、と思う人が増えたということだろうか。日本人も、走り続けて疲れてきたのかもしれない。

最後に気になるお値段だが・・・・各便により多少の上下はあるものの、東京→仙台間の片道、全席指定の「はやぶさ」に乗った場合、乗車券を除く特急券+指定席券の価格は、普通指定席=5,310円、グリーン車=8,600円、そしてグランクラスが13,600円である。これに乗車券の5,780円を加えると、東京→仙台片道が、普通指定席=11,090円、グリーン車=14,380円、グランクラス=19,380円となる。グランクラスの片道が、普通クラス指定席の往復運賃とほぼ同じ・・・・となれば躊躇しない方がどうかしているが、というのも新幹線の普通指定席、十分快適だからだ。しかし、食事とドリンクは無料、飛行機のファーストクラスに乗ろうと思えば100万かかるが、グランクラスはたったの往復4万で、束の間王侯貴族気分を味わえる。どこに行っても大混雑のせわしない年末年始、年に1回の旅行であるならば、この程度の贅沢は自分へのご褒美として許されるのでは?! と思う方、ぜひ一度グランクラスを体験してみよう!


 

Takako Sakamotoさんによって書かれました。
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