初めての新幹線

ロマンティックでちょっと不思議 新幹線の僕のイメージ

日本に来る前、僕は彼の有名な高速列車「新幹線」についてある意味ロマンティックで風変わりなイメージをもっていた。 それはこんな感じ・・・。

世界中から来た外交官たちと僕は新幹線のホームにいる。 公式行事なのでみんなスーツ姿だ。 新聞社のカメラマン達が一斉にフラッシュをたく。 皇后様がホームにお出ましになったのだ。  彼女は新幹線の先端まで進むと声も高らかに宣言した。 「この列車を新幹線と命名します。」

皇后様は日本酒の大きな瓶を手に取り、新幹線の正面の長い鼻の部分にあてて割った。(船の進水式のイメージ) 音楽隊がウィスコンシン大学の応援歌を奏ではじめると、乗客たちは家族や友人に手を振る。

乗客たちが皆列車に乗り終えると通信装置からの割れた音声が聞こえる。 いざ出発。 時速80マイル、100マイル、150マイル・・・。 僕の頬が振動で波打ちはじめる。 外の景色はスピードが上がるに連れ、ぶれてぼやけて見える。

もし貴方がまだ新幹線に乗ったことがなければ、きっと其々にイメージを描くだろう。 僕のは少し奇抜過ぎるかもしれないけれど・・・。

新幹線はただ時速200マイルで移動できる乗り物という訳ではない。 この島国を大きな車両が連なる列車で超高速で巡っているのだ。

この列車はまるでニューヨークの地下鉄の様に、ごく普通の電車と同じで、停車し、また発車を繰り返している。 16両で運行し、定員は大体1300人位。 そして東京駅を5分毎の間隔で出発している。 贅沢な豪華遊覧船やスペースシャトルなど非日常的で特別な乗り物では決してない。 新幹線は正に日常的な乗り物だと言える。

日本の2大都市である東京と大阪を毎日323本の新幹線が運行しており、39万人もの人々を運んでいる。 実に驚異的な数字だ。 解り易く言うと、オハイオ州クリーブランドの人々全員を列車に乗せ、同じ日にワシントンD.C.に移動させたということだ。

新幹線の年間平均速度は時速170マイル、そして遅れに関しては何秒という単位で示されている。 しかも全4路線のうち1路線だけだった。 この数字は鉄道に馴れ親しんでいるヨーロッパの人々をも驚かせるに違いない。 イタリアの人達、どうですか? 323本の電車が1秒も遅れないなんて!

列車で旅した事がある人はおそらく、人と荷物が乗車を終え実際に駅を出発するまでに恐ろしく時間が掛かった経験をしたことがあるだろう。 この新幹線に限ってはまったく違う。 16両の列車が駅に入り、人が降りて乗る、そして発車。 すべてがわずか2分程度。 中には、3分おきにこの乗り降りを行う駅だってあるのだ。

もうひとつちょっと想像がつかなかったのは、時速200マイル、いや150マイルでももちろんだが、そのスピードで走り抜けるという感覚。  実際、この列車があまりにも滑る様になめらかに走るので、まるでそんな速さだとは感じる事ができなかったのだ。 減速または加速の際にもガタガタ揺れたりする事は全くなかった。 スピードをどんな時に実感できるかと言えば、窓の外を見た時、ビルや木々がものすごい速さで遠ざかっていくのを自分の頭がその映像を処理しきれなくなったからだった。

僕の中では、何故か新幹線とアガサ・クリスティーの小説が混じり合い、高速列車で外交官や他の高官たちが国中を旅するというイメージが出来あがっていた。 でも実際、新幹線の乗客は、通勤で利用する人、高齢の女性、子供達、家族連れなど、いわゆる普通の人々だった。 

この日本の象徴のひとつともいえる高速列車について、やっと実際に利用してみてどんなものか理解できた。 新幹線は驚嘆に値する計画・技術力によって作られた物であるという事。そして、もし日本を訪れたなら是非とも乗ってみる価値があるということだ。

そして今、思い出してみると・・・。 ウィスコンシン大学の応援歌は聞こえてこなかった気がする。

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