星野エリアを巡る、お気楽極楽な旅

~マイ・バースデー in 軽井沢~(後編)

Miwa Kaneoya   2012/10/17によって

前編はこちら

寒露が近い高原の朝は、いささか肌寒い。午前9時からの行動開始を目指し、早めに起床。宿泊先であった『チサンイン軽井沢』で供された500円の朝食バイキングを利用した。和食と洋食のチョイスがあるのだが、今回は人気のスクランブルエッグがなかったのが残念。でも、切干大根の煮つけと菜の花のおひたしの素朴な味わいがとても美味しく、おかわりをしてしまった。
朝食後に、ホテルのお隣に建つ民家で飼われている子ヤギの番いと朝の挨拶を交わして、予定通りに9時にチェックアウト(ホテルの正式なチェックアウトは10時まで)、すがすがしい朝の空気に包まれて、徒歩にて駅まで向かう。

この日は、中軽井まで足を伸ばした。1時間に1~2本しかない“しなの鉄道”に乗り一駅、鉄道に揺られること10分弱。中軽井沢は現在開発中のようで、駅ビルが工事の真っ最中であった。2日目は自転車で移動する予定だったので、駅前にあったレンタサイクルやさんで自転車を2台、借りた。

ガイドブックによると、第一目的地である『星野温泉 トンボの湯』の方向に、われわれの目指す目的地が固まっているよう。では、まず浮世の汚れを落とそう!と、星野エリアへ向かった。道は浅間山の鬼押出しへと向かう、メインストリートに沿って山道を上る。自転車をこぎながら辛うじて上れる、緩やかなカーブである。トンボの湯は、最近オープンした中軽井沢の新しくお洒落な観光スポット、ハルニレ テラスを少し進んだところにある。

実はトンボの湯は今回2回目の訪湯となる。7年前に初めて訪れたときは、まだ3月の冬の寒さが残っていた時期だった。山間にある星野温泉は、豊かな森の自然に囲まれ、森林浴というだけでも価値がある。今年は全国的に夏が長かったのか、紅葉に色付く葉っぱは10月の第一週の時点では殆ど見られなかった。

星野温泉の泉質は、源泉かけ流しで「美肌の湯」ともいわれる弱アルカリ性の高温泉、アレルギーを持っている私などでも安心して入れる。目前に広がるのは豊かな自然、内湯でも外湯でも、森林のマイナスイオンも味わえる癒しの場である。何よりも楽しみにしていた今回の湯治は、これまで無事に生きて来れた自分への労いと感謝でもあり、気兼ねなくたっぷりと入湯を楽しんだ。今回はサウナも存分に堪能し、丸々2時間の長湯だったが、のぼせずに済んだのは高原の綺麗な空気のおかげだろうか。

湯上りほやほやで次に向かったのが、トンボの湯から程近い『ホテル・ブレストンコート』の敷地内にある、『軽井沢高原教会』と『石の教会 内村鑑三記念堂』である。7年前にこちらのホテルで利用した、デザイナーズコテージが雰囲気も良くとても素敵な部屋だった。特に新婚さんにおすすめ!

軽井沢高原教会』は、1921年に誕生した、軽井沢の数ある教会の中でも古い教会の一つである。創立当初は、この空間を愛した内村鑑三によって『星野遊学堂』と名づけられ、布教の場としたそうだ。また北原白秋や島崎藤村など、当時の著名な文化人達が集い、芸術自由教育講習会を原点にした歴史ある教会としても知られている。
赴いたこの日は連休初日でもあったためか、結婚式を挙げているグループがいた為、聖堂内の拝観は式の終了まで待たされる事になった。挙式後のお目出度いライスシャワーが石畳に点在するのを見、教会の中に入ると、ハープとパイプオルガン奏者の女性が賛美歌を演奏しており、とたんに厳かな気分になった。

次の目的地へ移動すること数分、『石の教会 内村鑑三祈念堂』でもウェディングをしているカップルがおり、正門である入口からは入れず、石でこしらえられた森林の中の細い路地を通って、まずは資料館に通された。その石の通路からも聖堂のある建物を眺めることが出来るが、一見教会とは思えないほどの斬新でアブストラクトな建物。無教会思想であった内村鑑三氏へのメメントとして建てられたこの教会は、フランク・ロイド・ライトの流れを汲むアメリカ人建築家のケンドリック・ケロッグ氏によって作られている。それは「唯一無二」のものとして、軽井沢という土地の雰囲気を活かした独創的な建造物となっている。

聖堂が空くまで資料館を先に拝観し、内村鑑三氏の生い立ちと直筆の書を眺める。ちょうど最近、内村鑑三氏の著書に触れる機会があり、その人となりに非常に興味が沸いていたので、こちらは今回の軽井沢滞在では行きたい場所のベスト3に入っていた。資料館をしばらく眺めていると、挙式が終了したとのことで聖堂を拝観できると、案内された。

驚いた。外観もそうなら、内装もしかり。ここは教会?でも面白い。詰まれた石の間から水が滴り落ち、その床には池が作られており、木蔦があしらわれている。聖堂内が静まり返ったときには、水の流れる音がただ響くのだろう。天井からの光の差し込み方もとてもロマンチックに作られていて、石の教会、というとなんだか荘厳すぎて肩がこりそう!と思ったものだが、この教会は柔らかな空気と音もまた、デザインされているように感じられた。たしかに、軽井沢で挙式を挙げたいカップルにとっては、候補として上位にランクインされる式場となりそうだし、芸術作品として観るだけでも一見の価値があるだろう。

自転車に乗って石の教会を後にしようとしたとき、前日ハチミツを舐めすぎたからか、ミツバチが顔に突撃してきてびっくりした。自然と戯れるってこういうことだと、ちょっと痛かったミツバチの挨拶に頬をなでつつ、道々に落ちている沢山の小さな山栗を見て、色濃くなり始めた秋の気配を感じた。
大好きな星野エリアを後にし、時間がまだ少しあったので、タリアセンまでがんばって足を伸ばしたかったが、道に迷ってしまい今回は敢え無く断念。次の楽しみに取っておく事にした。レンタサイクルは3時間におまけしてもらい二人で1600円。

帰りは急ぎ乗車予約を取ってもらい、16時半発の高速バスに乗って帰還。バスの発車時刻までの間、中軽井沢の『Lapin』という小さなレストランでランチをし、今回のバースデー・トリップを締めくくった。

慎ましやかな旅だったが、徒歩やレンタサイクルなどでしか発見できない等身大の旅ができた。それでも十分に堪能できたし、お料理だけでなく空気も美味しいというのは、都会から来訪する者にとって、何よりのプレゼントのように思われた。

Miwa Kaneoyaさんによって書かれました。
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