祇園の「グレロ」で食事をしたときのこと。シェフの前田さんは「これ、花かごのパンです。」とわざわざ断ってパンを供してくれた。
京都では知る人ぞ知る名店だという。その「花かごパン」をついに師走のある日、私は訪れたのである。
烏丸通から六角通へと西に折れ、室町通を越えるとすぐ右側に見つけることができる。
店内は小さく、パン用オーブンが売り場から見える、工房のようで、いかにも職人の仕事場という雰囲気が漂っている。
オーナーブランジェーの花籠さんのキャリアは凄い。
東京・恵比寿の3つ星レストラン「ジョエル・ロブション」で修業した。
ジョエル・ロブションといえば、日本のフランス料理業界への影響はものすごく、「フレンチの皇帝」とまで称される有名シェフである。
そのロブションに若き花籠さんは鍛え上げられたのだ。
その後渡仏。
帰国後、関西のレストランでも経験を積んだのちに京都で開店した。
パティシェでもある花籠さんは注文に応じてケーキも焼くという。
彼のモットーは「ワインや食事など、何かと一緒に食べると美味しいパン作り」だそう。
そういえば、店内にはチーズ、シャンパン、ワイン、外国製ビール、生ハムなどいろいろなパンのコンパニオンとなる飲食物が商品として並んでいる。
「花かごパン」は、ハード、セミハード、ソフトの3種類のパンを20数種類製造し販売している。
幸運にもその日はバタールが残っていて買えた。
一緒に買った「九条ねぎ入りフォカッチャを歩きながら頬張る。
ついでに赤ワインだけで練った「赤ワインパン」もちぎって食べる。
かつてのパリのブランジェリーの帰り道で小躍りしたあの嬉しさが再びこみ上げて来た。