京都にある清宗根付館はあまり多くの人に知られていませんが、日本の精巧な美術作品である「根付」の魅力を存分に味わえる魅力的な美術館です。場所は京都の壬生寺のすぐ近くにあります。歴史的価値の高い武家屋敷に作品が展示されている根付専門美術館です。美術館の所蔵品は3000点を超え、その中から選び抜かれた約400点もの根付が展示されています。また建造物は、京都市指定有形文化財にも登録されています。
素晴らしい日本の芸術品である根付ですが、現在では使用されることが珍しいため、日本人にもあまり知られていません。根付は人々が日常的に着物を着ていた江戸時代に流行しました。着物にはポケットがついていないため、常備薬や煙草、お金など小さな物を持ち歩く際に、根付が使われたのです。袋や印籠など持ち運びたいものにヒモをつけ、そのヒモの端に根付を取り付けて着物の帯にひっかけることで、物が持ち運べるという仕組みです。このような用途から根付は小さいのですが、巧みに作られた芸術作品です。美術館に展示された根付はとても繊細で、中には細部まで見るために虫眼鏡と一緒に展示されている作品もあるほどです。
根付は極めて精巧であると同時に、どこか温かみも感じられます。それはきっと、根付作家さんたちが時間と労力を惜しまず魂をこめて作りあげた作品だからでしょう。
作品の題材は様々で、例えば紅葉のような日本の四季のものから、人、動物、さらには野菜や想像上の生き物まであります。素材としては象牙、木、陶磁器などが使われ、それぞれの質感が生かされています。一つ一つの展示作品には日本語・英語両方のタイトルがつけられているので、それを見て外国人も作品について理解を深めることができます。中には作品とタイトルにちょっぴりユーモアがきいているものもあります。
美術館の建造物自体も、清宗根付館の大きな魅力です。この建物は江戸時代後期、1820年に建てられたとされ、京都市に現存する唯一の武家屋敷です。根付の最盛期である江戸時代の屋敷を修復した美術館は、まさに根付を展示するのにぴったりの場所と言えます。歴史的建造物を見るだけでも訪れる価値があり、美しく静かで心落ち着く空間です。
根付は江戸時代に大流行しましたが、明治時代に人々が着物をあまり着なくなった頃には、海外から高い評価を得て、主に輸出用として作られるようになりました。その後、根付は一時衰退に向かいましたが、現在では優れた芸術作品として再評価されるようになり、現代根付作家たちも活躍しています。
展示作品は、古典根付・現代根付どちらもあります。「根付という日本が誇れる精巧な伝統芸術を次世代に継承したい」という思いが形となった美術館は、現代根付作家たちの作品を展示し、彼らの活動を支える場所でもあります。
清宗根付館は年中開いているのではなく、年5回、期間限定で開館しています。美術館の多くの所蔵品の中から毎回選ばれた根付が展示されるので、1ヶ月間の展示が終わって次に開館するときには、また違う作品を楽しむことが出来ます。美術館スタッフの方によると、何度も訪れるリピーターも徐々に増えてきているそうです。
2013年夏の企画展はすでに終了してしまいましたが、宍戸濤雲さんという現代根付作家の素晴らしい作品がとりあげられ、他の根付作家の作品とともに美しく展示されていました。
季節ごとの企画展も楽しみです。何年か後にはまたお気に入りの根付作家さんの作品が展示されるかもしれません。
清宗根付館を訪れる前に、必ずホームページで開館期間と時間を確認して下さい。せっかく訪れても、閉館の時だったら残念ですので…。
もっと多くの人に足を運んで欲しい、そう思える美術館でした。私もまた訪れたいと思います。
【入館料】
一般:1000円 中学・高校生:500円(学生証が必要)
※小学生以下の入館はご遠慮下さい。