佐賀県佐賀市に、日本に多くある城の中でも格別ユニークな城がある。佐賀城だ。というのもこの城、平城なのである。通常日本の主だった城は、堅固な山上に建てられているものだが、佐賀城は平坦な野原に建っている。ちなみにこのような日本の平城は、通常巨大な石垣に守られている。佐賀城の「鯱(しゃち)の門」と呼ばれる正門は1957年、国の重要文化財に指定された。鯱 (もしくは鯱鉾 しゃちほこ)は、頭部が虎、胴体が魚の架空の生き物で、直訳すると「キラー・ウェイル、シャチ」だ。このモチーフは江戸時代に流行り、多くの城の屋根に採用されている。
日本の古い建築物の多くは再建を繰り返してきたが、佐賀城もご多分に漏れず現在に至るまで幾度も改修された。最初の再建は1728年まで遡り、2004年の改修工事が最新のものだ。木造建築物の改修工事としては、国内でも最大規模の工事の一つである。佐賀城では外部から美しい城の建築を堪能できる。また佐賀城本丸歴史館に行けば案内ガイド付きツアーも利用できるほか、ヘッドフォンを借りれば(英語解説付き)一人でも観て廻れる。ビデオの上映やバーチャル・アニメツアー、実際に手に取り試せる展示物もある。しかし歴史館内での写真撮影は禁止なので注意が必要だ; とはいえ一旦外に出れば撮影は自由だ。ギフトショップでは侍が使っていた各種日本刀や鎧などの美しい写真入りの本が手頃な価格で手に入る。
ここで雑学知識をひとつ; 有名な侍本、「葉隠」(直訳で隠れた葉、の意)の著者、山本常朝(つねとも)は佐賀藩士で(当時の肥前藩)、人生の一時期この佐賀城で精勤していた。ジム・ジャームッシュの映画、「ゴースト・ドッグ」を観た人なら、主演のフォレスト・ウィテカーが映画の全編において「葉隠」の文章を引用していたのを覚えているだろう。長年の侍人生の後、山本常朝は 高伝寺 にて出家し、山本常朝(つねとも)から山本常朝(じょうちょう)へと名前を変えた。
とにかく、もし佐賀に来たなら佐賀城に立ち寄ってほしい。この土地の肥前藩時代の面影を辿り、幕末から明治にかけての激動の時代、この藩が、そして人々がどう生きたかを知るには最高の場所だ。