奥秩父・三峰山の山頂に鎮座する三峯神社。標高1100mの場所に位置し、秩父三大神社のひとつとして数えられている神社だ。オオカミを守護神とし、神門や鳥居の前には狛犬ではなく、オオカミの像が置かれている。
三峯神社がある地、秩父は古くから日本オオカミを、”御眷属(ごけんぞく)”・”山の神の化身”として崇拝してきた。
眷属とは、「本来実態のない神を、人間の目に見える形で動物などを遣わせたもの」。たとえば、稲荷神社のキツネも眷属にあたるが、あくまでも、”神使”で、決して神ではない。神に遣われる下の身の者なのだ。ここで注目してほしいのは、眷属であるオオカミが、「神」としても崇敬されていることだ。眷属を神としても崇めることは、非常に珍しいと言える。
この地域では災難や悪魔・病気除けとして、オオカミの頭骨などの遺骸を自宅に置く風習があった。昔は医者になる者があまりいなかったことや、「病気は人の祟りで病む」などと言われていた時代だったことも背景にあり、オオカミ信仰が盛んになったのではないかと思われる。
ではなぜオオカミが、”山の神の化身”とされたのか。秩父山中を聖域および神体とする山岳信仰が関係しており、オオカミの生活拠点が神域であった山であったため、「大いなる神(オオいなるカミ)」と呼び、神様として遇した、という意見もある。
“山の神の化身”でしかなかったオオカミに、「大口之真神」という神名がつけられたのは、1721年。「大口之真神」の神札を、日光法印がこの年に発行したと言われており、日本オオカミは今でも、「御眷属様」・「神犬」・「お犬様」と呼ばれて、三峯神社で人々に愛されている。
《参考》
- 『ヤマイヌ・「狼神とおつかい狼」』/アクセス日:2015/6/18
- 『オオカミ信仰とは』/アクセス日:2015/6/18
- 『秩父オオカミ信仰に関する比較民俗学的分析』/アクセス日:2015/6/18
★今後の執筆予定
- 三峯神社境内(興雲閣含め)
- 清浄の滝 (三峯神社信者の修行場)