「上様の、御成~り~。」埼玉県川口市を南北に縦断する日光御成り道は、徳川家康が祀られた日光東照宮に、歴代の将軍が江戸城から参詣に向かう「将軍専用道」として、江戸時代に整備・発展した歴史ある街道です。日光社参は将軍家の一大事業であり、その距離は約48kmにも及びました。第10代将軍家治の際は、行列の先頭が日光に到着してもなお、最後尾が江戸を出発していなかったと伝えられています。
1600年関ヶ原の合戦。徳川家康は上杉征伐のためこの道を北上していましたが、今の栃木県小山市(小山宿)についたとき石田光成が挙兵したことを知り、直ちに引き返して関ヶ原(岐阜県)の合戦で勝利します。その後将軍に任じられ江戸幕府を開きました。いわば天下取りの戦に勝利した縁起の良い道なのです。
当時は江戸城を出て日光に到着するまで3泊4日の行程で、川口宿・鳩ヶ谷宿は御成り道の重要な宿場として栄えました。鳩ヶ谷宿の中腹にある鳩ヶ谷鎮守氷川神社の境内では、良く晴れた日に世界遺産に登録された富士山を眺めることが出来、徳川家康が休憩したと伝えられています。その言い伝えから、今ではパワースポットとして名をはせています。
家康没後300年の時を経て、川口市では2012年11月「第1回 川口宿 鳩ヶ谷宿 日光御成り道まつり」が催され、徳川8代将軍吉宗や、徳川家康の養女で日光東照宮に大名の正室としては唯一燈籠一対『栄姫灯篭』を奉納した栄姫など、総勢1800人を超える当時の装束の行列が織りなす歴史絵巻は圧巻でした。第2回が2014年に催されて、隔年開催予定のこのイベントは次年度は未定となっています。
現在の御成り道界隈では道路の拡張工事などが行われていますが、当時の面影を壊さぬよう、建て替えられる店舗なども黒塗りの壁に木のぬくもりを活かした和風なデザインになっており、散策するのに風情を感じさせてくれます。