自然が私たちにもたらす豊かさは、なにものにも変えることができない。
せまい土地に、たくさんの住宅や建物がたちならぶ日本。 特に都心では豊富な自然をみることはほとんどできません。地球温暖化は、森林の減少も原因と考えられています。
そんな中、首都圏に「緑の孤島」が存在するのを知っていますか。
「緑の孤島」といわれる狭山丘陵は、むさしの台地西部にあり、東京と埼玉にまたがった残丘状の丘陵です。都心から近いとは思えないほど、大規模な自然が広がり、多彩な生物たちが息づいています。
狭山丘陵は、映画「となりのトトロ」を思わせる風景や地名があることから、この作品の舞台モデルになったと言われており「トトロの森」としても知られています。そして、この森を守っているのが宮崎駿氏が財団の“顧問”をつとめる、「公益財団法人 トトロのふるさと基金」です。
狭山丘陵は都心に近いために、戦後からレジャー開発や住宅造成などの宅地開発計画がすすんでいました。1971年には丘陵の南に位置する東大和市で、住宅造成の企画が出ましたが、市民らが反対運動を起こし阻止します。
そして、1980年の某大学の所沢キャンパス建設を契機に、市民らが「狭山丘陵の自然と文化財を考える連絡会議」、「狭山丘陵を市民の森にする会」を発足。この2団体のほかにも、財団法人埼玉県野鳥の会(現在の公益財団法人埼玉県生態系保護協会)や、一般の市民らも立ち上がります。
みな心をひとつにし、同じ団体に属するも属さないも関係なく、パンフレットなどの発送やイベント担当、招きに応えての講演、自然観察会など、自分たちでできることを行いました。そうした活動のなかで「トトロのふるさと基金」は、1990年に誕生したのです。
その後はナショナル・トラスト活動を行い、市民や企業からの寄付金で、狭山丘陵の自然の土地や歴史的建造物を買い取り、将来へ引き継ぐ運動をするようになりました。1990年の「トトロの森1号地」をはじめ、現在までに「トトロの森28号」までをトラスト地として取得しています。
そのほか、宮崎駿氏が書き下ろしたイラスト入りのグッズ販売や、狭山丘陵のゴミひろいや下草刈りなどを行うボランティアの募集なども行うなど、狭山丘陵を守るために幅広い活動を行っています。
トトロのふるさと基金やボランティアの方々の活動のおかげで、狭山丘陵には多くの自然が残っています。四季折々の花や葉の美しさはもちろん、夏にはカブトムシやチョウ、秋には水辺をとびかうトンボの姿が見られ、多くの野鳥が息づいています。
しかし、今も狭山丘陵では資材置き場などの小規模開発や、住宅造成などが後をたたないのも現状です。
「地球温暖化が進んだとき、何が一番豊かなんだろう。身近な緑が、守られていることではないのか」 宮崎駿 / 東京新聞TOKYO Web2007年10月1日から引用
宮崎駿氏の言葉は深く私のこころに突き刺さりました。
私自身も、未来の子ども達に豊かな自然を残してあげたい。賢明に生きるために、私たち人間は何を大切にすべきなのかと。
※参考URL・・・公益財団法人トトロのふるさと基金沿革・概要(アクセス日:2015/1/27)