日々のイライラからくるストレスを忘れて心を落ち着けるには、自然の中でのハイキングが一番です。ハイキングは時を忘れて、今まさにその一瞬を楽しめるエクササイズです。そしてそれこそが、これからお話しする宮城オルレ(ハイキングコース)の真髄なのです。宮城オルレは陸や海の景色、歴史や文化を経験することに焦点を当てた特別なハイキングコースで、自然を肌いっぱいに感じながら海岸線や山道を巡り、あなた好みに、あなた自身のペースで楽しめるコースです。オルレは済州島(韓国)に端を発しています。済州島は、息を呑むほど美しい青い海岸線や滝、そして火口湖や溶岩洞を擁する火山地形があることから、しばしばアジアのハワイとよばれています。「オルレ」という言葉は済州島の方言ですが、今では刺激的で同時にリラックスできる代表的トレッキングコースを呼ぶ際の代名詞となっています。そして宮城オルレは済州島やモンゴル、九州にある他のオルレと共通の特徴を備えているのです。
宮城オルレには2つの選択コースがあります:
最初のコースは気仙沼・唐桑コースです。10キロメートルのやや難しいハイキングコース(4~5時間)で、三陸ジオパークの雄大な海岸線を通り抜けていきます。このコースは、半島先端にある唐桑半島ビジターセンターが出発点で、海水の侵食で削り取られた大理石の積層で有名な宮城県北部の巨釜・半蔵に至ります。この地域はおよそ37年ごとに津波被害を受けていて、最悪の津波は2011年に起こりました。このコースでは、2011年の津波で海底から引き剥がされた巨大な岩があちこちに点在する海岸線を見ることができます。これほどの被害を受けたにもかかわらず、人々は海に対する恐れと調和の気持ちを同時に抱きながら、ここに住むことを選択したのです。コースの途中には、彼らが愛する人々の海上での安全を祈願して建てた多くの神社があり、かれらの自然を崇拝する姿勢が、ここによくあらわれています。
2つ目のコースは奥松島コースです。これは10キロメートルのやや楽なコース(4時間)で、日本三景の一つにも数えられる景勝を楽しむことができます。松島湾には松の木におおわれた260の小さな島々があります。そのあまりの美しさに有名な俳人の松尾芭蕉でさえ絶句し、俳句に表現できなかったといわれています (訳者注:「松島や、ああ松島や、松島や」という有名な俳句を詠んでいます)。アルバート・アインシュタインも1922年にこの地を訪れ、最初言葉を失いました。しかしやがて平静を取り戻し、「どんな名匠もこの美しさを造り出すことはできないだろう」と言いました。このコースはあおみなを出発し、縄文時代 (紀元前約1,000年で狩猟採集生活が主だった時代)に遡る遺跡を巡ります。このコースは有史以前の貝塚で、人々の暮らしの証拠となる里浜貝塚を通っていきます。コース終点の大高森では、奥松島の360度パノラマビューが楽しめます。
両コースともに、青や赤のリボンや木製の矢印、岩の表面に塗られた矢印、馬形の矢印によって進行方向が表示されています。宮城オルレの公式ウェブサイトでは、コースの標高や見どころ、食事場所や宿泊施設の詳細などが紹介されています。この2つのコースは、地域の新鮮なシーフードや地元の人々の親切なおもてなしの心が楽しめる絶好の機会です。すべての場所が感動を与えてくれるこのコースを、ゆっくりとお楽しみください。