重厚な歴史遺産・遺跡の前に立つと自分は謙虚になれる。
だから、自分は旅をしたいと思うのだ。
長浜は豊臣秀吉が開いた水運の町、商業都市である。
長浜の北国街道沿いに佇む商屋群は、かつてこの地の商業が隆盛を極めていたことを彷彿とさせてくれるすばらしい歴史遺産である。
鉄道や自動車といった陸運によって水運が衰退するまで、この長浜は琵琶湖疏水を経由して東京・大阪を結ぶ水運の要だった。
だから町のあちこちに往時を偲ばせる豪商の蔵や町屋が立ち並んでいる。
町を探訪していたら昼食時になった。
滋賀県JR長浜駅からすぐ近く。
「鳥喜多」本店は昼時になると店の外に行列ができるほどだという。
真夏の真昼はさすがに暑くて、その行列は見られなかった。
この「鳥喜多」には支店がある。
同じ「鳥喜多」なのに支店は空いている。
判官贔屓の私は即その支店へ向かった。
暖簾をくぐると、穏やかそうな表情のおばあちゃんが迎えてくれる。
私はおばあちゃん子だったから、こんなおばあちゃんがいるところはほっと安心できるのである。
親子丼は日本全国どこにでもある食べ物で、ひょっとして家庭でも相当においしいのを作れる主婦だっているはずに違いない。
だから、特に過大な期待はしていなかったしお腹が空いたのでお昼にしようかという感覚である。
まもなく運ばれて来た「親子丼」には真ん中に生卵がぽん、と一つ入っている。
これが個性なのだろうかと味わいながら箸を進めて気がついたことが2つあった。
その生卵が美味しい!
良い鶏卵農家と契約をしているのだろうか。
それと、もうひとつ。
鶏肉がとてもきれいに始末してあって、余分な筋とか脂身とかが丁寧に取り除かれていた。
それだからだろうか、出汁が舌に柔らかく、全体の味付けもとても優しい。
鳥鍋とビール(キリンラガー中ビンでした)と親子丼2つで2000円とはリーズナブルな値段ではないだろうか。
B級グルメというものは自宅でも店より美味しいものを食べていらっしゃる方々が全国にたくさんおられるはずだから、私は敢えて紹介はしない主義なのだが、この「鳥喜多」の親子丼はその値打ちがあると私は思っている。
おばあちゃんの笑顔もあってとても幸せなお昼になった。