三溪園

横浜の秘宝

人里離れた辺鄙な場所に、一際威容を放つ美しい庭園がある。三溪園だ。季節ごとの美しさに定評があり、それはそれは見事な庭園で、不便なロケーションのため海外からの観光客が滅多に訪れないのが残念極まりない。彼等は行くべきだし、みんなが行くべきなのだ。

3月下旬から4月上旬にかけて桜が満開になる。7月~8月、正門すぐ右手の池では、桜と同じピンク色の花びらを一斉に開いて咲き誇る、何千もの日本の蓮がとてつもなく美しい。通常、開園は午前9時だが、蓮の花のシーズンには6時頃来るのがお薦めだ。朝日に照らされ、蓮の花のつぼみが「目覚める」光景を存分に堪能できる。秋の終わりには移りゆく紅葉の色彩が得も言われず美しく、2月中旬から下旬にかけては梅の花がほころび始める・・・自然が、日本人に冬の終わりを告げているかのように。

三溪園には政府から重要文化財に指定されている文化的価値の高い屋敷や建物がたくさんある。これら建造物は日本各地から移築されたもので、庭園奥の丘上に立つ三重塔は1400年代半ば京都で建立、1914年に三溪園に移築された。

元々三溪園は生糸の豪商、原 三溪(1869-1939:本名 富太郎)の自宅だった。かなり広大で(175,000平方メートル)、1906年に一般公開された。原が20世紀初頭に力をそそぎ造園、1908年に完成した。明治後期から昭和初期にかけては、数々の芸術家たちが集う人気の会合場所となる。第二次世界大戦による空襲で園内の建造物は大きな損傷を受けた。1953年、原家から庭園の寄贈を受けた横浜市は、財団法人三溪園保勝会を設立、以後庭園の補修・整備に力を尽くしている。

公園内を歩くと、その美しい日本庭園や橋、小川のせせらぎ、小さな滝、竹林や池に心を奪われ、つい嬉しくなって何枚も写真を撮ってしまう。原家の人々が起居していた広大な平屋建ての屋敷は「鶴翔閣」と呼ばれている。屋敷内に何十もある広々とした和室は間続きになっており、そこからは緑の芝生が敷き詰められた屋敷内の庭園を心ゆくまで眺められる。

幸運にも私はこの庭園から徒歩圏に住んでいるため、年に4、5回は訪れている。特別なお客様を招くにはもってこいの場所で、静謐で落ち着いたこの庭園に連れて行けば、必ずや日本の美を堪能してもらえるに違いない。

三溪園に行くには、京浜東北線(根岸線とも呼ばれる)の根岸駅で降りる。庭園行きのバスは3種類あり、1番乗り場から出ている58、99、そして101番のバスに乗る。三の渓(さんのたに)バス停下車、デニーズ方向に50メートル逆行して進む。道を渡ると花屋があるので、そこを左折。住宅街を抜けると2つ目の交差点が見えてくる。ここまで来ると庭園行きのいろんな標識が立っている。右折すれば庭園だ。通常9時~17時まで開園している。

庭園探索に精根尽くした自分へのご褒美に、根岸駅や山手駅までタクシーに乗りたい人は、1000円前後で贅沢気分を味わえる。庭園の入場料は小学生が200円、中学生以上の大人が500円だ。

正門で車椅子の貸し出しもある。

詳細情報

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