常識的に言うと、人を恐怖に落とし入れるなんて好ましくないことだ。だけど、みなかみ町の橋が舞台となるバンジージャパン的見地から言うと、そうでもないらしい。平常心を持ったいつもの僕には考えられないことに、唯一の命綱であるゴムのロープと共に、僕は橋から飛び込むことに同意した。
バンジージャパンは日本で唯一のブリッジバンジージャンプだ。(テーマパークにあるような、下にマットが引かれたタイプではなく、自然の川に向かって飛び込むタイプのもの。)42メートルの高さから、みなかみ町の美しい景色に囲まれてジャンプするというのが売りで、日本とニュージーランドの共同チームによって運営されている。なぜ、南半球のお方たちは、自分を恐怖に落とし込むことによって喜びを見いだそうとするのか。
当日の前夜は不安で眠ることができなかった。やっとのこと眠りに落ちた後は、朝まで悪夢を見た。僕は特に高所恐怖症ではない。ただ、高い橋から飛び下りるのが怖いのだ。
橋の周りにはいろいろな見物客がいる。興味津々のただの通行人、見るからに不安そうに順番待ちをしている人、すでにジャンプをし、湧き出るアドレナリンに興奮冷めぬ人、そして、自分は挑戦する気の全く無さげな応援隊。
僕は最初から最後までずっと緊張していた。スタッフたちは非常に効率の良いシステムを取っていて、こちらが知るべき情報をテキパキと説明してくれる。その時点ですでに橋のプラットフォームに立っているので、高さに足がすくむ。足首にロープを繋がれ目の前のジャンプ台まで進むまでがとてつもない道のりのように感じ、いよいよおなかの調子まで悪くなってきた。周りの景色が美しいことは分かっていたけれど、そんなことはもうどうでもよく、極力、目下に広がる大きくぱっくりと口を開けたような渓谷を見ないように努めた。こんなことをなぜしたいのかさえ分からなくなったけど、それと同時に、寸前で躊躇し、せえのっで背中を押されるようなハメにはなりたくなかった。血管が破裂しそうな勢いで体内を流れる中、奈落の底へ身を投げた。(「身を投げた」なんて思いきった描写をしたのは、実際にそう感じたからなのだけど、本当のところは、録画ビデオをが語っているように、腰が引けて何とも哀れな姿であった。)ただ、自分の体を反射神経とは裏腹に、心の指示に従わせることができたことを実感した時は、非常に爽快な気分になった。つかの間のフリーフォール、そのあと、繋がれたロープが自分の重みを引き上げ、何回かのバウンスで地面と再会した時の安堵感。その後にようやく、なんて楽しかったんだ!という歓喜に満ちた思いが押し寄せた。
もしあなたが「毎日何か1つ恐怖を克服する」という考えに賛同するなら、バンジージャンプはお勧めだ。恐怖に打ち勝つことは決して悪いものではなく、心を開くことにより、あなたに真の達成感を与えてくれるだろう。
※2013年の開催期間予定は4月13日〜11月11日
飛ぶ前に気絶する人もいそうですね・・・笑