アドミュージアム東京 ADMT

広告という芸術を楽しむ

Tomoko Kamishima   2012/08/04によって

『テレビCMが好きだ』という方なら、ぜひのぞいていただきたい。展示室のiPadには、年代ごとの名作CMが満タンである。ヘッドフォンをして、懐かしいCMを観ていると、おかしくて思わず吹き出したり、じんわりと心が熱くなったりするかもしれない。

アドミュージアム東京ADMTは、カレッタ汐留にある広告の資料館である。入場は無料。江戸時代からの広告史と内外の広告賞受賞作品を展示するミュージアム、および広告図書館で構成されている。日本の広告を「科学と芸術の総合である」と言って、文化芸術に育て上げた『広告の鬼』、吉田秀雄(元(株)電通社長)の生誕100年を記念して、2002年汐留に開館した。

常設展示

江戸時代から現在に至る広告の歴史展示物が並ぶ。江戸時代、すでに我が国では広告の前史が見てとれる。錦絵にさりげなく織り込まれた商標名や、商品を手に取ってたたずむ美人画、店名を入れた芝居の口上など、商人たちは、江戸の庶民文化に敏感に反応していたようだ。明治以降は、色彩豊かなチラシ、ポスターなど印刷物が広告の主流となる。マッチ箱のような小さいものから、大判のポスターまで、時代のイメージが鮮烈だ。戦後、テレビが普及するとTVCMが広告の花形となっていく。モノクロからカラーになると、一気にCMから伝わってくるエネルギーが増大するように見える。そして、音楽が重要なエッセンスとして広告のイメージを広げていく様子が面白い。

企画展

折々の企画展はアドミュージアムのホームページなどで確認していただきたい。2012年7月28日から10月14日までは『日本のCMぜんぶ1953-2012』と題して、60年分の代表的CMを紹介している。懐かしいものからつい最近のヒット作まで、TVCMを自由に観ることができる。

2000年のユニクロのフリースの宣伝を覚えている方は多いかもしれない。カラフルなフリースジャケットが、何百枚も、延々と目の前を流れていく。ただそれだけのとてもシンプルなCMだ。見ているうちについつい、私はどの色がいいかな、と思わせてしまう不思議な画面。最後に1980円という価格が出る。このCMを見たら、週末はユニクロに行ってみようと、実にたくさんの人が思ったはずだ。郊外のユニクロは、当時、広い駐車場がいつも満車だったのを覚えている。

もう一つ、2006年のトヨタの宣伝も面白い。男性がトヨタの自家用車に乗り込むところからCMが始まる。ドアを開けると、トヨタ社員らしいスーツ姿の男性が、シートの代わりに車内に並んでいる。一瞬ぎょっとするが、男性はごく自然に、ヘッドレストを調整して車に乗り込み、シートベルトを締める。それが、トヨタ社員の首を伸ばして、その両腕を自分の胸の前で組ませる、というシュールな動作で行われる。雨が降ると、濡れながら必死にワイパーを動かすのもトヨタの社員、いざというときのために、エアーバッグを膨らませて準備しているのもトヨタの社員、トランクを開けると、荷物が見えるように、懐中電灯を照らしてくれるのもまた、トヨタの社員である。そして、『見守られているという安心感』というテロップが出る。機械という冷たい印象を消して、マンパワーで「安心感」を押し出そうとしているのであろうか。実際にこんなに大勢の人が車内にいたら、逆に『見張られている不安感』に苛まれてしまう気がするが、そこがこのCMの面白いところである。

企画展開催中は、500本以上のCMをiPadで自由に見ることができる。ヘッドフォンは二本ついているので、大切な人とネットサーフィンならぬ、CMサーフィンするのもいい。

広告というのは、時代を映し、文化を生み、流行を造る、人々の鏡のような存在である。だから過去のCMを見ると、その時の自分が蘇ってくるようで、懐かしくも切ない気分になるのだろう。「当たりはずれのある映画を一本観るよりも、何年分かのCMを観たほうが、確実にぐっとくるなあ。」というのは、わたしの独り言…です。

Tomoko Kamishimaさんによって書かれました。
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