1900年のクリスマス創業以来、江ノ電は藤沢-江の島-鎌倉間を100年以上にわたり走り続けてきました。創業当時に比べると辺りの風景も一変し、もっと早くて便利な交通機関も登場しましたが、江ノ電以上に素敵な旅を提供してくれる乗り物はそうそう見当たりません。窓外の景色、道を行き交う人々、そして列車そのものが、単なる1つの場所から他の場所への移動を、楽しい観光旅行へと変えてくれるのです。
なんといっても江ノ電の最大の魅力は、今でも創業当時の面影を留めるその客車です。近未来的な新幹線とは対照的なその客車の中には、むき出しの木の床をそのまま使っているものもあり、まるで西部劇に出てくる酒場にタイムスリップしたような、非現実的な夢の世界へとあなたをいざないます。
小田急デパートと一体になった藤沢駅から出発する電車は静かな住宅街をごとごとと進み、江の島駅に到着します。ここからの行程は通常の電車ではなく、市街を走る路面電車の旅へと様変わりします。道路を走る車を追いかけ追い越す、路面電車の中から愉快なカーチェイスを楽しめます。腰越駅あたりに来ると、そこはもう鎌倉市内です。電車は海岸線を走り、窓からは江ノ島がよく見えます。晴れた日には湘南の勇敢なサーファー達が波に挑む姿も見られます。
そこから数分後、電車は再び内陸に向かって進み、鎌倉の景色が見えてきます。緑が増え、住宅街近くにくると、まるで誰かの家の庭を走っているようで、ふと手を伸ばせばプランターの花まで摘める気がします。路線の幅の狭さが尚一層この感覚を嵩めます。10キロに及ぶこの路線は単線で、時に対向車の通過を待つため、駅で停車しなければならないのです。
藤沢駅を出て30分ほどすると長谷に到着します。鎌倉大仏の最寄り駅です。ここから鎌倉駅までは緑が減り、お店や住宅が増えます。海岸へ行くなら長谷-鎌倉間の由比ヶ浜、もしくは和田塚で降りるとよいでしょう。
海岸近くの住宅街を走る観光路線・江ノ電のもう一つの魅力は、なんといっても人間観察です。鎌倉や江ノ島見物目当ての観光客だけでなく、東京辺りからの騒々しい日帰り海水浴客、サーファーなど、いろんな人種を観察することが出来ます。
切符はたったの190~290円。580円の1日乗車券もあります。もっとお得なのが鎌倉-江の島パスで、たった680円で江ノ電以外にJR藤沢~鎌倉間、湘南モノレールの大船~江の島間が乗り放題です。江ノ電の藤沢駅、鎌倉駅では、お土産用の可愛い江ノ電グッズ・・・バッグ、ハンドタオル、そしてもちろん、「電車セット」が販売されています。