福井「宮ノ下コスモス広苑」

福井県下最大のコスモス畑

Shozo Fujii   2014/10/07によって

秋の彼岸を過ぎれば夜長になって人の心は秋気に染まる。「もののあはれ」の季節である。

源氏物語で使われている語の中で、春夏秋冬の四季のうち、秋が断然多いそうだ。

秋に咲く花の代表は草冠に秋と書く「萩(はぎ)」だろう。

万葉集でももっとも多く詠われる花である。

切り花となって花屋の店先をにぎわす華やかさはない。

 野辺に咲く花はどこまでも控えめである。近年路傍にコスモスを随分と見かけるようになった。

一度植えると種がこぼれるのだろう、放置しておいても翌年には必ず芽を吹いて花が咲く。

半野生化したこのコスモスは元は遥か遠くメキシコの高原地帯にひっそりと咲いていた。

中世の大航海時代、マヤ文明の地に入り込んだスペイン人たちは黄金だけでなく野辺に咲くこの可憐な花の美しさも見逃さなかった。

陸路・海路を通じて瞬く間に世界中の人の手に渡ったコスモスは、19世紀末にようやく日本に辿り着く。

 野辺に咲く内は割り合い持つのだが、自宅の花瓶に入れて愛でようと切り花にするとあっという間に萎れてしまう。

そういう意味では「朝顔の花一時(いっとき)」に通ずるはかなさだ。

濃淡のピンクや白の彩りは秋の「もののあはれ」の趣にはいささか華やかであるが、やはり野に置け、ということだろう。

 福井県福井市の西、九頭竜川のほとりに在る宮の下という地区は20年前に、稲作の緑肥の方策として休耕田にコスモスを植えた。

花が咲き終わった後刈り取り土に鋤き込まれて緑肥となり翌年の稲作で化学肥料を減らすことができるというものだ。

そうしたらそのコスモス畑の規模が何せ田んぼだから普通の野辺に咲くレベルとは違って広大である。

群生の見事さがメディアに取り上げられ、ツアー行程に組み込まれた観光バスが何台もやって来るにぎわいとなったのである。

 2014年現在では広さ17.5ヘクタールの田におよそ1億本のコスモスが風に揺れる。

しかし問題があるという。

現在、「宮ノ下コスモス広苑」は入場無料である。

しかし、運営するのに多額の費用がかかる現実がある。

既に伝統行事となりつつある中、当初の緑肥の目的だけでは済まなくなってきた。

東京ドーム10個分という広大な土地に蒔くコスモスの花の種の費用だけでも相当な金額になるであろうことは容易に想像できる。

さらに、手弁当で運営に当たるスタッフはこの地区の住民の方々だが、その笑顔の裏にある大変なご苦労を思うと、この素晴らしい行事が「残念ながら今年限りです」と言われても致し方ない。

 「宮ノ下コスモス広苑」の大ファンである私は、一人¥100の寄付を来場者皆さんに戴いたら良いと思うのだ。

「この素晴らしい花畑を来年も開催続行するためにお一人¥100のご寄付をお願いできますでしょうか?」と。コスモス(でなくてもいいが)の種の小さな袋をお礼として返す形でである。

6000人の来場者があるというからこれで60万円の篤志が集まる。種代は十分に拠出できるだろう。素晴らしいことは続かなければならないし、続いてほしい。

 清楚に佇むコスモスが抜けるような澄んだ秋の青空に吸い上げられていた。思いのほか坦々と過ぎてゆく秋の季節にあって、陽の光だけが揚々としてコスモスの花を揺らし私の心を焦がすのみである。

Shozo Fujiiさんによって書かれました。
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