最初っから行く場所を決めていた。なぜなら、今回は極力お金を使わない‥がテーマの節約の旅だったからである!高級避暑地で有名な軽井沢で貧乏旅、というのはそもそも矛盾していたかもしれない。けれども、決行に至った理由はバースデーでもあった自分の記念の為でもある。
宿泊先は『チサンイン軽井沢』、車だったら碓氷インターを降りてすぐのアクセスの良い場所にある。今回は徒歩がメインだったので、電車でのアクセスだと、軽井沢駅から往復約6kmの道のりを歩くことになる。しかしながら、季節は10月。気候の良い中での散歩はそんなに苦ではなかった。尚、ホテルにはレンタサイクル用の自転車があり、周辺の施設をくまなく周るには、車をホテルに置いて自転車で移動する方が、小回りが利くかもしれない。
北口には軽井沢銀座で有名な、旧軽井沢の賑わいのあるメインストリートに繋がっており、南口にはプリンスホテル主催の大型アウトレットモールが広がっている。今回はあくまで貧乏旅であるので、1日目は旧軽井沢に点在する、教会めぐりをすることにした。
10月最初の週末だというのに、インディアンサマーのような陽気。標高も高く空気が澄んで綺麗なので、思いのほか日光を強く感じる。大宮から10時半発の長野新幹線に乗り、12時を回ってから到着したので(カツサンドを社内で食したものの)もう腹ペコである!なぜなら、駅から軽井沢銀座のあるストリートに辿り着くのに2km位の徒歩。歩いていると至るところで良い食事ができそうな、美味しそうなレストランが軒を連ねている。
空腹の限界で見つけたレストランは、上質な黒毛和牛を100%使ったミディアムレアのハンバーグをサーブしてくれるという『ハンバーグ専門店・井筒屋』。色々なチョイスの中から選んだこのレストランにして正解!良い塩梅で練られた味の良いビーフパテに、5種類の中から選べるソースがマッチしていてとても美味!(私はデミグラスソースをチョイス)○○回目のバースデーの、幸せなランチ‥感謝してレストランから程近い、次の目的地・聖パウロカトリック教会に向かった。
ご存知の通り、軽井沢は著名人たちにも人気の高い高原リゾートなので、案内板にはここは誰それが~などと丁寧に説明がなされ、ガイドブック以上になるほどと、発見できる箇所がいくつもある。旧軽井沢の中でも注目スポットである聖パウロカトリック教会は、70~80年代に有名人カップルが次々と結婚式を挙げた、『軽井沢ウェディング』発祥の教会でもある。
さて、チャーチ・ストリートを進み、スケッチに訪れている人々の列を抜けて観る教会は、ガイドブックを読んでイメージしていたよりもコンパクトなたたずまい。こちらは1935年に英国人のワード神父によって設立されたカトリック教会で、建築は米国建築学会賞を受賞したアントニン・レーモンド氏が担当されたのだそうだ。中に入ると木の温もりが感じられるシンメトリーの聖堂、軽井沢でウェディングを挙げたいカップルにとって親近感の湧く、夢のある構造なのかもしれない‥なんて感じられる。先に来ていた数組のカップルも、未来の夢を語っていたのだろうか。祈りを捧げ、窓から差し込む秋の穏やかな日差しを受けながら、聖パウロカトリック教会を後にした。
次に向かったのは、同じく旧軽井沢に位置する『軽井沢ショー記念礼拝堂』。チャーチ・ストリートのある付近から更に歩いて1kmほどだろうか。メインストリートを抜けた先にあり、その先は森に差し掛かる手前、松尾芭蕉の句碑に出会ったら、間もなく左手にショー氏の銅像と大きなクロスと看板が見える。カナダ・トロント出身の司祭、アレキサンダー・クロフト・ショー氏が日本にキリスト教を宣教するため1895年に設立した、軽井沢で最も古い教会である。森の中に佇む、自然の息吹を存分に感じられる木造の小さな教会で、アットホームな聖パウロカトリック教会よりも、繊細で静謐なイメージがした。“軽井沢の父”とも呼ばれたショー氏の滞在によって、衰退しかけていた宿場町・軽井沢は西洋的なモダンな街へと再び栄え、当時来日していた外国人からも優れた保養地として知られるようになったとのこと。
たしかに、今年の夏ような、逃げ場のない長い夏を過ごさねばならない時、さらに都会のハイスピードな時間の中で息苦しさを覚えたら、休息を求めて清らかで綺麗な空気を吸いたくなることは、老若男女、国籍・民族を問わず人間の正常な欲求の一つであると、身をもって納得する。当時、英語が解せない日本人が今よりももっと多かった時代に、軽井沢を避暑地として求めた外国人の気持ちは、容易に理解できる。"屋根のない病院"と軽井沢を絶賛したショー氏の言葉は、なるほど合点である。
更に、同じ敷地内にショー記念館として、創設当時ショー氏が旧軽井沢の大塚山に建設した別荘もまた復元されており、入場料無料で拝観できる。
駅に戻る道中、軽井沢銀座に軒を連ねる小奇麗なお店を眺めながら気づく事は、ハチミツ屋やジャム、腸詰、そしてチーズのお店が多い事。特に、ハチミツ好きな私は様々な草花から採取されたハチミツが並ぶお店に立ち寄った。花によって、蜜の味も多種多様、中でも私のお気に入りは桜のハチミツ。桜もバラ科なので、鼻に抜ける香りにほんのりと薔薇のニュアンスが感じられ、ソメイヨシノのまろやかで優しい和のテイストがホワっと口に広がる。ヨーグルトや紅茶にはもちろんの事、料理に使うソースにも使えるかもしれない。蜂ヒゲおじさんのお店も気になったのだが、種類の多さから『天狗屋養蜂店』にて今回はハチミツを買い求めた。
軽井沢駅に戻り、話題のアウトレットモール『軽井沢・プリンスショッピングプラザ』に集う人々の間を、無言でただただ通り抜け、徒歩にて宿泊先である『チサンイン軽井沢』へ向かう。
バースデーナイトであったディナーは、ホテルから徒歩20分ほど、プリンス通り沿いにある、『Wing』というレストランにした。別に持参した厚手のジャケットを着込んでの、まさに足で見つけたレストラン!80年代よりご夫婦二人で切り盛りしている、温かな雰囲気に包まれたレストランだ。丁寧に作られたお料理はどれも美味しく(標高700m以上の高原でないと育たない花豆のフライも、とても美味だった!)、お値段もリーズナブル、軽井沢に滞在の際ははまた立ち寄りたいレストランとなった。ちなみに私がオーダーしたのはお店でおすすめのウィングドリア、特製のホワイトソースがとても美味しかった!! 後編に続く..