鹿児島、仙巌園

心地良き伝統: 日本庭園のある大名別邸

鹿児島の歴史は島津氏なくしては語れない。代々鹿児島守護、藩主を勤めた島津氏は、その長い歴史の中で学者、政治家、武士、改革者、近代化論者を輩出した一族だ。鹿児島市から車で南へ少し行くと仙巌園がある。1658年に建てられた島津家の別邸で、美しく造園されたその庭園は、特に鹿児島湾と桜島の風景を「借景」した光景が得も言われず美しい。

ここに着くとまず出迎えてくれるのが入口に置いてある巨大砲だ。ここには庭園とは不釣り合いに見える歴史遺産の銃器があちこちに置かれている。私が訪れた時、ちょうど毎年恒例の菊まつり(11月開催)が行われており、入口近くには鉢に植えられた菊が飾られていた。庭園も色とりどりの満開の菊の花で埋め尽くされ、砲兵の人形ですら菊花の戦闘服を着せられて、不服そうな面構えを見せていた。

この庭園は単にゆっくり歩き回るだけでも気持ちが良い: ここには綺麗に刈り込まれた芝生や石灯籠、丁寧に剪定された木々、装飾庭園、簡素な別棟、記念碑、そしてNHK大河ドラマ「篤姫」撮影時を再現したマネキン人形がある。庭園中央の島津家別邸を通り過ぎると、平坦だった地形も変化に富んでくる。とはいえ穏やかな雰囲気に変わりはない。庭園の奥、丘の麓には鬱蒼と茂る木立があり、その向こうには巨大な竹林が、高々と揺らぎながら聳えている。そして曲水の庭からは何やら楽しげな音が聞こえてくる: 俳句大会が行われているのだ。出場者は制限時間内に俳句を作成せねばならないが、なんと酒入りのコップを庭園を巡る小川に流し、そのコップの流れる速さでタイムを測るというから粋だ。

ちょっと山登りしたい気分なら、木々の茂る丘の階段を昇ればよい。注意書きが警告するほど時間はかからない。階段を昇るうち、かつて滝を眺めるために造られた観水舎を通り過ぎるが、この滝、見るべきほどのものではない上に、首を伸ばして頑張ってもちらりと少し見えるだけだ; 更に登れば休憩エリアに着く。ここからは湾越しに聳える桜島の景色が美しく見える。

追加で500円払えば、別邸で20分間ガイド付きツアーができる; 日本語ガイドだが、英語で書かれた説明書がもらえる。これを読めば島津氏の歴史を知り、手入れの行き届いた別邸内部を更に深く観賞することが出来る。ツアーの最後には抹茶と和菓子まで戴ける。

ここには見どころが沢山あるので、休憩もしくは食事をとる場所が必要となってくる。ここでいくつか選択肢を挙げよう。島津氏別邸の裏には「茶室 秀成荘 徒然庵」があり、入口近くにはレストラン松風軒(しょうふうけん)がある。私はここで美味しいカレーのランチを食べながら再び桜島の絶景を楽しんだ。松風軒と入口の間には薩摩ラーメン屋の入ったビルがあり、このビルにはもう一つ地元特産料理を出すレストランもある。お茶や猫のデザインの工芸品を売る土産物屋も入っている。入口近くの中央通り沿いにはあと2つ土産物屋があり、多様な品物以外に地元名産の大福も売っている。

チケットは別棟にある小さな博物館の入場券も兼ねている。この博物館は歴史遺物のオンパレードだ: 砲弾やガラス細工、籠や産業機械、鎧兜などが順不同、雑多に置かれている。もちろん日本語が読めれば配置の意味が理解できるのかもしれない。それより興味を惹かれたのは隣にあるガラス工場だ。そこでは鹿児島特産の華麗な切子ガラスの製作工程を一部始終見られるだけでなく、ここで製作された切子ガラスの展示を隣のギャラリーショップで観ることが出来る。

徒歩の場合、庭園に行く一番簡単な方法は鹿児島シティビューバスに乗ることだ。乗車場所にもよるが、鹿児島市内から約20~30分で庭園に着く。心地よい風景、興味深い歴史や工芸品、ゆったりした環境を楽しめる仙巌園、訪ねる価値大の絶対お薦めスポットだ。

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