京都鞍馬山に登るには、叡山鉄道で鞍馬駅まで行く。
源義経が七歳まで預けられ育てられたという鞍馬寺を巡って降りたら、いい具合にお腹が空いた。
寺に上がったのが1時を回っていて下山したのが3時。
だから大分遅いお昼ご飯である。
鞍馬駅前にある「心天狗(こてんぐ)」は蕎麦屋だが、暖簾には「和み家」とある。
暖簾をくぐると、小さな土産物コーナーがあり、その奥が座敷になっていて、私はそこに通された。
現経営者がおばあちゃんの実家をそのまま居抜きで蕎麦屋の店舗として使っているのだという。
座敷には座卓が4つ。床の間もなかなかの風情だ。全然店舗らしくないところが良い。どこかよその家にお呼ばれしたみたいで嬉しい。
まずはビールを所望。すると冷奴と根菜の煮物の肴が無料で出てきた。
こういう気遣いが客を喜ばせるのだろうな。
次におろし蕎麦を注文する。
福井で美味しい蕎麦を食べ慣れているから蕎麦の味にはこだわりがあるのだが、「心天狗」の蕎麦は確かに美味しい。具もその味をよく引き立てているし調和している。
ビールにほろりと酔いつつ、短くも壮絶な一生を駆け抜けた源義経を想いながら暖簾を押して外に出た頃には陽はとっぷりと暮れていた。