真鶴は、箱根の南東にある半島で、東京駅からJR東海道線で約一時間半の距離にある。その形が、鶴の舞う姿に似ていることから真鶴と呼ばれ、すっと伸びた鶴の首の先には、箱根火山の溶岩によってできた、名勝三ツ石がある。
元旦、ここには多くの人が御来光を拝みに訪れる。注連縄のかかる三ツ石の間から昇る朝日は、まさに一年の幕開けにふさわしい、厳粛な光を放つのだという。夏の三ツ石もまた、近隣の人々で賑わう。樹齢350年から400年の松が群生し、シイやクスの巨木が茂る林を抜けると、突然視界が開け、相模湾に浮かぶ三ツ石が現れる。暑さを遮る木立の中で森林浴をするのもよし、海を眺めるのもよし、磯遊びや釣りを楽しむのも、またよしである。
三ツ石海岸
三ツ石海岸は、沖に突き出た三つの大岩、三ツ石に続く約200mの細長い海岸である。
岩場の続く海岸線は、緩やかにカーブして、東は小田原方面の、西は湯河原や熱海方面の景色を対岸に望む。初島はすぐ目の前に、大島も思いのほか近くに感じる。岬の西側には、番場浦という小さな砂浜がある。その脇に、歩きやすい潮騒遊歩道があるので、岩場に行かずに、遊歩道から三ツ石を見ることもできる。しかし、靴を脱いで水の中を歩けば、もっと楽しい。足下には、貝類や小さな生き物たちを見つけることができる。
三ツ石の注連縄は、1977(昭和52)年に真鶴町観光協会が取り付けた。金属製で、直径13cm、総延長37m、重さは1tにもなるという。三つの岩が重ならずに、文字通りの三ツ石を見るためには、潮騒遊歩道を歩くのがよい。ケープ真鶴に引き返さずにそのまま進み、番場浦遊歩道、坂道を上って、森林浴遊歩道、御林遊歩道と、森の中を散策するコースがお勧めである。中川一政美術館前まで行けば、JR真鶴駅行きのバス停がある。ここまで、三ツ石海岸から所要約1時間である。
テントを張って、一日ゆっくり磯遊びをしているファミリーがいた。番場浦は、浅くて波も穏やかなので、とくに家族連れの海水浴には人気があるようだ。だが、潮騒の道を歩いて雄大な三ツ石の景色を眺め、深い森の中で緑を満喫することのできる四つの遊歩道は、デートにも、仲間同士の散策にも、一人で黄昏たい老若男女にも、お勧めしたいコースである。
ケープ真鶴
三ツ石に行くには、JR真鶴駅からバスに乗って終点のケープ真鶴まで行く。三ツ石海岸は、階段を下りてすぐそこである。バスは30分に1本程度、土日は朝8時以前の便は運休となるので、朝日を見るためには車で出かける必要がある。駐車場は、ケープ真鶴と番場浦にあり、計200台収容できる。夏の期間は有料(7月21日から8月26日まで1日500円)。ケープ真鶴は、年中無休の休憩所で、売店、喫茶、食堂などを備えている。建物の2階は、遠藤貝類博物館である。なんと4500種、5万点の貝を所蔵している。夏休みに子供と訪れるなら、海水浴を兼ねた自由研究のテーマ探しに最適だ。博物館の入館料は、18才以上300円、小学生以上150円で、木曜は休館。
なお、バスは途中、真鶴港を通る。途中下車して、遊覧船に乗ったり、魚市場をのぞいたりするのも楽しい。