私の美食の盟友、黒味伝(くろみ つたえ)さんは最近まで福井市内にあるフランス料理店「ジャルダン」のグランシェフを務めていましたが、後進に道を譲りました。
黒味 伝さんは旭日双光を受賞しました。2年前の「現代の名工」受賞に続く名誉です。
1993年、彼は福井市内に新規開店するフランス料理店「ジャルダン」へ総料理長として招聘されました。
フランス料理のシェフとして彼は東京、フランス、福井と美味追求の人生を変遷しました。黒味さんは、「福井は美味しい食材の宝庫である」とよくおっしゃいます。確かに福井は水清く空気が澄んでいて山海の食材の水準は全国屈指だそうです。料理の「原石」として秘めた力を料理人がその感性で皿の上に解き放つ、これこそが料理人冥利に尽きることでしょうか。
黒味さんのフレンチはとことん、福井(日本)とフランスのフュージョンなのです。それは彼だけが創造しうる世界です。彼の人柄そのものの反映とも言うべき、限りなくやさしく、深く、想像性豊かで、刺激的な料理と形容できるでしょう。
私が東京の、いや、海外のどのレストランでも経験しえなかった印象です。ジャルダンの若手シェフ達はみな黒味さんの料理の高みを目指して登ろうとしています。それもまたジャルダンのこれからの魅力になっていくでしょうし、私をはじめとしたフレンチファン、ジャルダンファンの楽しみでもあります。
私の自宅からわずか30分のところに彼がいて、私に飛び切りの料理を供してくださる。彼を私はとても誇りに思います。偉大な料理人として。また、食の盟友として。