福井ではスーパーで売っている刺し身でさえ鮮度といい味といい非常に品質が高い。これが料理屋となると、食材はもう一段階吟味されることになる。福井の人は舌が肥えているから、「人口が少ない(日本で第42位)→客が少ない」、という条件の下、半端な料理を出そうものならあっという間に店に閑古鳥が鳴く宿命である。
したがって、福井で、「この店は美味しい」と地元の人たちに支持されている店は全国屈指の店と言って間違いではないだろう。そう言える店のひとつが、私が愛する「甚兵衛」という和食料理店である。
この名店の魅力は食材へのこだわりだ。最近は輸入野菜の化学物質・農薬汚染問題がかまびすしい。そんな安価だが危険な恐れのある食材を多用する低料金のフランチャイズ居酒屋で飲みたいという気が、私には最近まったく起こらない。
逆に、少々高くても安心安全でなおかつこだわりの美味を供してくれる本物の店にこそ行きたいと私は常々思っている。その意味で、「甚兵衛」は私のみならず食通の福井人の舌と胃袋をしっかりと満たしてくれる、大した店なのである。
魚介類はもちろんなのだが、たとえば鶏肉は名古屋コーチン、比内鶏、牛肉は若狭牛といった具合に、食通が納得するものを仕入れている。そしてそれをリーズナブルな福井価格で提供する。
食材の新鮮さと確かさ、調理の腕のよさ、器の美しさ、店の雰囲気のよさ。どれをとっても大満足の店である。四季折々の美味と福井の旨い酒。そして格別な食材と名醸ワイン。言うことがない。ぜひ探訪を。超のつくお勧め店である。