福井三国菓子舗「小山屋」

三国酒饅頭の元祖

  「小山屋」は福井三国の酒まんじゅう屋の元祖である。三国の酒まんじゅうは、先ずもち米と糀(こうじ)を使って甘酒を作る。それを熟成させ、酒の香りの強く出たところに小麦粉を加えて種を作る。その種をさらに発酵熟成させてから練り餡を包んで蒸す。この製法は作業工程が複雑なために昨今の大半の和菓子店では酒粕を用いた酒饅頭が主流だ。だが、饅頭皮の風味も味わいもまったく別物で、やはり糀からの甘酒が醸し出す酒饅頭とは比べ物にならない。それほどに本格製法の三国「酒饅頭」の美味しさは格別で、福井で酒饅頭といえば「三国饅頭」を指すほどその名は知れ渡っている。

 三国饅頭の起源は遠く江戸時代にさかのぼる。福井・三国は大阪と北海道を結んで瀬戸内海、日本海の港を経由して運行した北前船の寄港地であった。日本各地の豊富な物資が三国に上がり、多くの豪商が繁栄し三国は大いに栄えた。あるとき、海が時化(しけ)で舟が港に停泊せざるを得なかった折にその船頭が酒饅頭の製法を三国にもたらしたのである。酒饅頭の甘酸っぱい芳香と皮のもちもちっとした食感が大評判となった。豪商たちはその慶事に五千とも一万ともいう酒饅頭を撒いて祝ったという。全盛期には三国に25軒の酒饅頭製菓店があったそうだ。現在は6店舗の酒饅頭屋がそれぞれ味わいの違う酒饅頭を製造販売している。

 えちぜん鉄道三国駅から九頭竜川に向かって西に5分ほど歩くと右側に「小山屋」、道路向かいに「西坂」がある。双方ともに三国まんじゅう菓子舗である。西坂のファンが圧倒的に多いのは事実なのだが、最近私はこの「小山屋」の酒まんじゅうの美味しさを再認識しているのだ。西坂の酒まんじゅうは、皮がやや固めである。もちっと噛みごたえがある。餡の味わいも濃い。

 一方の小山屋。皮はふんわりと柔らかくしっとりとしている。糀(こうじ)の甘酸っぱい香りが何とも清々しい。餡は甘すぎず小豆の風味が舌にとても心地よい。三国の酒まんじゅうとはいえ、全く異なった個性を放つ両者。そして「小山屋」の酒まんじゅう、勝るとも劣らず美味である。もっと支持されてしかるべきだ。

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