江戸元禄の頃、新潟の古町近くに創業した行形亭(いきなりや)は、300年以上の歴史をもつ老舗料亭である。樹齢数100年と言われる黒松林や、錦鯉の泳ぐ池を囲む2000坪の敷地内に、13の座敷が点在している。旬の素材を丁寧に味付けした美しいお料理を運んでくれるのは、和服に身を包んだ新潟美人の仲居さんたち。予約をしておけば、お座敷に芸妓さんを呼ぶこともできる。
行形亭の楽しみ方
行形亭は新潟の歓楽街・古町の奥にある。まわりは閑静な住宅街だが、おしゃれなショッピングエリアもすぐそばにある。門をくぐると、早速仲居さんが出迎えてくれるが、すぐに座敷に上がらずに、お庭を一巡りさせてもらうとよい。起伏に富んだ回遊式庭園に、四季折々の花が咲いている。
瑞々しい草木の香りを嗅ぎながら、池にかかる橋のたもとにさしかかると、鳥小屋があった。中を覗くと、本物と見間違えるほどよくできた、つがいの鶴がいる。座敷に案内してくれた仲居さんに訪ねたところ、1975(昭和50)年まで、ここで丹頂鶴を飼っていたのだそうだ。店のシンボルとして、今も暖簾や器、その他の飾りなどに鶴の印が使われているのだという。
新潟の味
米どころ、酒どころの新潟は、米や酒に限らず、野菜も魚もおいしい。今宵の先付けは6品。彩りよく上品な味付けの数々に舌鼓を打った。とろりと甘い南蛮エビ、舌触りのよいヒラメ、甘みのあるホタテ、小さめだがとろけるようなマグロの刺身に続いて、汁の物、焼物、炊き合わせ、そして寿司。デザートは、市松模様に組み合わされたバニラと抹茶のアイスクリームだった。酒宴が盛り上がると、箸の動きが緩やかになる。それに合わせて、早からず、遅からず、タイミングよくお料理が運ばれてくる。その絶妙な気配りが、老舗の老舗たる所以であろう。
行形亭は、元禄文化華やかなりし頃(1688-1707年)の、贅沢なお茶屋の面影が残る老舗である。昼のコースは一人12000円から18000円、夜は21000円から32000円位。現金の他、クレジットカード払いや、後日の銀行振込もできる。芸妓さんをお座敷に呼ぶには、事前予約が必要で、一人2時間で19450円から。アクセスはバス停「東大畑二番町」下車徒歩2分だが、市内を走るタクシーに『いきなりや』と言えば、黙って店の前まで運んでくれる。